年金月13万円・夫を亡くした高齢妻「もっと素敵なところがいいわ」と<入居100日>で「老人ホーム退去」も、遅すぎる決断に後悔
老人ホーム費用…平均寿命から考えると後悔しそう
夫を亡くし、ひとり残された高齢妻。夫婦の年齢差や平均寿命から考えると、妻は79~80歳ほどというパターンが多いでしょうか。夫が元会社員で、妻は専業主婦であれば、遺族年金と自身の国民年金で月14万円ほどの年金を手にします。 入居一時金がある場合はある程度まとまった金額でしょうから、貯蓄を取り崩して支払うというのがよくあるパターン。月額利用料は月々の年金額で収まれば御の字。差額があるなら、貯蓄から補填して対応となるでしょう。 たとえば入居一時金1,000万円、月額利用料が23万円という老人ホームへの入居を検討する、80歳女性。夫を先に亡くし、年金は月々13万円受給しています。 「女性の平均年齢は86歳ほど。この年齢まで入居できるお金があればいいかしら」 月額利用料のほかに考えておきたいのは、サービス外の費用。平均3万円程度かかるとされていますので、月26万円の支出と考えると年金との差額は月13万円。入居一時金と合わせ、6年間の入居で2,000万円程度は必要であることがみえてきます。 ただ生存率で考えると86歳時点で半数以上の女性は生きている可能性が高いといえます。生存率は90歳で4割を下回り、94歳で2割を下回ります。何歳まで生きるか神のみぞ知るところですが、よくある「平均寿命から考えると……」というシミュレーションでは、少々頼りないものといえそうです。
老人ホームの退去は珍しいことではないが…
綿密に、かつ余裕のあるシミュレーションのもと、老人ホームに入居。これで一安心といけばいいのですが、絶対とはいえません。家を借りたことのある人であれば、きっと経験しているはず。 ――ちょっと自分には合わないなあ ――もっと素敵なところに住みたいわ 内見をきちんとしたとしても暮らしてみると違和感を覚えたり、欲が出てきたり……それは老人ホームにおいても同じで、実際に老人ホームの退去は珍しいことではありません。 ――入居一時金も戻ってくるし、また自分に合ったホームを探そう そう考えて退去を決めたとき、入居一時金の返還金には注意が必要です。入居一時金の返還額は「初期償却率と償却期間」で決まります。初期償却率は入居一時金のうち返ってこない金額の割合。賃貸物件でいえば、返ってくることのない礼金みたいなもの。入居一時金は一定期間の家賃の前払い金であり、この一定期間が償却期間です。たとえば前出の入居一時金1,000万円の施設。初期償却率20%、償却期間7年だとしましょう。この施設を3年で退去することになったら、返還金は450万円程度になります。 また『契約後90日以内』のクーリングオフ期間が過ぎれば、初期償却が適用され、その分は戻ってきません。入居後100日で退去となった場合は、まずは1,000万円から、初期償却率20%をかけた800万円、さらに場合によっては10日分は日割り計算され返還されるわけです。 ――えっ、たった3ヵ月ちょっといただけなのに、200万円も取られちゃうの⁉ 早く退去を決めたはずなのに……大きな後悔をするわけです。このように老人ホームを検討するなら「初期償却率と償却期間」の仕組みをしっかりと理解したうえで決断を。そうすれば万が一退去となった場合でも、余分なお金を払わずに済むでしょう。 [参考資料] 東京都福祉局『在宅高齢者の生活実態調査』 厚生労働省『特定施設入居者生活介護』 厚生労働省『令和4年度厚生年金保険・国民年金事業の概況』