倉本聰36年ぶりの映画『海の沈黙』が北海道でお披露目!記者会見&舞台挨拶に、本木雅弘、小泉今日子らが登壇
「北の国から」など数々の名作を生みだした倉本聰が、36年ぶりに映画脚本を手掛ける『海の沈黙』(11月22日公開)。本作の記者会見&舞台挨拶付き先行上映が10月13日に札幌で開催され、主演の本木雅弘と小泉今日子、菅野恵、倉本、そしてメガホンをとった若松節朗監督が登壇した。 【写真を見る】89歳の倉本聰が60年あたためてきたテーマに挑む!「正真正銘最後の作品になる」 本作の舞台は北海道・小樽。世界的な画家、田村修三(石坂浩二)の展覧会で、展示作品のひとつが贋作だと判明。連日報道が加熱するなか、北海道で全身に刺青の入った女の死体が発見される。この二つの事件の間に浮かび上がったのは、かつて新進気鋭の天才画家と呼ばれるも、突然人々の前から姿を消した津山竜次(本木)。彼の元恋人で現在は田村の妻である安奈(小泉)は小樽で竜次と再会するのだが、彼の体は病に蝕まれていた。 本作の着想の元となったのは、1960年に起きた「永仁の壺事件」。それまで鎌倉時代の古瀬戸の傑作として国の重要文化財に指定されていた瓶子が、実は1897年生まれの陶芸家、加藤唐九郎の作品であるといわれ、重要文化財の指定が解除。文部技官が引責辞任する事態となったというもの。札幌プリンスホテル別館 国際館パミールで行われた記者会見で倉本は、「(偽物だとわかると)皆が美の価値を下げてしまう風潮に納得がいかず、なんとかドラマにしたいと思っていました」と、長年にわたって構想を続けた本作への想いを語る。 一方、主人公の津山竜次役を演じた本木は「憧れるような魅力の詰まった作品で、そのなかの竜次というキャラクターが私で成立するのか戸惑いもありました。ですが今回は(倉本にとって)“正真正銘最後の作品になる”とのオファーだったので、覚悟を決めてお受けいたしました」と明かし、「繊細さ、頑なさを秘めた難しい役で苦労しましたが、熟練の若松監督の支えもありながらなんとか乗り切ることができました」と撮影を振り返った。 同日夜にTOHOシネマズすすきので行われた舞台挨拶付き先行上映のチケットは即完売。満席となった会場に5人が登場すると、地元・北海道の観客からは大きな拍手が。「倉本先生の本拠地、そしてロケの思い出のある北海道でいち早く皆さんに観てもらえることを大変うれしく思います」と挨拶する本木に、倉本も「俳優さんがすばらしいです」と太鼓判をおした。 トークのなかで本木は、倉本から電話で「心情に沿っていれば、感じたままにおやりになればよろしい」とアドバイスされたエピソードを明かし、小泉は「倉本先生が書かれたテーマに惹かれ、そして主演が本木さんだと聞いて、これはきっとおもしろく素敵な映画になるだろうなと思い参加しました」と振り返る。これがスクリーンデビュー作となった菅野は「子どもの頃から観ていた方々ばかりのなかに、私の名前が並ぶチャンスをもらえたので、しっかり準備して、やるぞ!という意気込みで臨みました」と語った。 また、倉本が手掛けた東芝日曜劇場の作品から影響を受けたことを明かした若松監督は「倉本さんと一緒に仕事ができるということが、監督としての誇りです」と感無量の面持ちで語り、「本作でも倉本節とよいえるセリフがたくさん出てきます。ぜひ楽しんでもらえたらと思います」とアピール。そして舞台挨拶の最後は、「皆さんがおじいさん、おばあさんになったときに、孫に昔、北海道はこうだったんだという昔話をできるような映画になればいいなと思います」という倉本の言葉で締めくくられた。 文/久保田 和馬