京都府知事による公費での大嘗祭参列は政教分離原則に反しない 京都地裁で判決
令和の皇位継承に伴う2019年の大嘗祭の一連の儀式に京都府の西脇隆俊知事らが公費で参列したのは憲法が規定する政教分離原則に反する違法な支出だとして、同府民ら12人が西脇知事に公金約37万円の返還を求めた住民訴訟(本誌の昨年10月13日号で詳報)の判決が2月7日、京都地裁(植田智彦裁判長)であった。判決は「天皇に対する社会的儀礼を尽くすという世俗的なもの」として、政教分離原則に反しないと判断。原告の請求を棄却した。 西脇知事や府職員は19年9月、京都府南丹市で行なわれた新米を収穫する「主基田抜穂の儀」や、同年11月に東京の皇居で催された「大嘗宮の儀」の「主基田供饌の儀」などの諸儀式に公費で参列した。原告側は「新天皇が新穀を天照大神と共食することで神となる宗教儀式への参列は、憲法の政教分離原則や国民主権原理に違反する」などと主張していた。 裁判で原告側は政教分離原則の新たな視点として「天皇の宗教儀式は社会一般の宗教儀式とは異なり、厳密に皇室の私的領域にとどめられるべきもので、それに国や自治体は一切関わってはならない」などと主張。天皇の宗教儀式との関わりを判断するのに、社会一般の宗教活動との関わり合いで判断する基準として1977年に津地鎮祭訴訟の最高裁大法廷判決が示した「目的効果基準」を適用するのは誤りだと指摘した。 だが判決は、原告側の主張する新たな視点を「(憲法の)解釈論として傾聴に値すべきもの」と評価しつつも「憲法上それが定められていると解釈することはできない」と断定。そのうえで知事らの大嘗祭参列については「天皇の即位に伴う皇室の伝統儀式に際し、日本国及び日本国民統合の象徴である天皇に対する社会的儀礼を尽くすという世俗的なものであり、その効果も、特定の宗教に対する援助、助長、促進又は圧迫、干渉等になるようなものではない」と目的効果論を適用することで政教分離原則違反を否定した。