ECB利下げへの期待、最初の一歩を前に崩れ始める-年内2回のみも
(ブルームバーグ): 好調な経済データと欧州中央銀行(ECB)タカ派当局者の発言により、一部のアナリストや投資家の今年のECB利下げ観測は揺らいでいる。
大半のエコノミストは今週の初回利下げ後も四半期ごとの利下げを予想しているが、一部のエコノミストは粘着性のインフレ、急速な賃金上昇、驚くほど堅調なユーロ圏の生産が金融緩和を制限すると見ている。
シュナーベルECB理事やナーゲル・ドイツ連邦銀行総裁が7月緩和の可能性を排除したとみられることで、トレーダーの利下げ観測も後退している。ホルツマン・オーストリア中銀総裁は2024年に2回の利下げで十分だとの見方を示した。
慎重な当局者たちは、2会合連続の利下げをすると市場がそのペースを基本だと考えてしまうのではないかと懸念している。また、ECBの政策が米連邦準備制度理事会(FRB)と本格的に乖離(かいり)する可能性について、不安視している当局者もいるかもしれない。
スコープ・レーティングスのエコノミスト、デニス・シェン氏は、「われわれは昨年から、今年の利下げ幅は25ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)を3回までという比較的タカ派的な予想をしてきたが、この予想に対するリスクは利下げ回数が増えるのではなく減る方向にある。ECBは当然、この最後の1マイルであまりに積極的な利下げを行う過ちを避けたいと考えるだろう」と話した。
最新の経済指標は慎重を促すものだ。インフレがついに克服されたことを示すと当局が期待していた指標は賃金の伸び加速を示し、サービスセクターのインフレ圧力が和らぐには時間がかかることを示唆した。5月のインフレ率は4月の2.4%から2.6%に上昇し予想を上回った。
同時に、ユーロ圏経済は予想以上の回復を見せている。労働市場は回復力を維持し失業率は史上最低を記録、企業調査では苦境にあえぐ製造業に回復の兆しが見られた。
ECBが6月の利下げをやめるとは誰も考えていない。中銀預金金利は4%から引き下げられるだろう。また、消費者物価上昇率の全体的な低下は今後数カ月で再開するはずだ。