時には私生活を犠牲に......フランスの女性SPの日常に潜入。
大物政治家や命を狙われた人々の身辺を黙々と守るフランスの女性SPたち。まだ人数は非常に少ないが、常に危険にさらされ、時には私生活を犠牲にすることも辞さない。そんな彼女たちの仕事ぶりを垣間見た。フランスの「マダム・フィガロ」のリポート。 アメリカで最も裕福な女性セレブとは? 彼女たちはダークカラーのパンツスーツにフラットシューズを履き、髪をポニーテールにまとめ、周囲に目を光らせている。国際サミットや閣僚の外遊、国賓の来訪の際には目立たないように背景に溶けこむ。イヤホンや、ジャケットの襟についた徽章だけが、彼女たちが何者なのかを告げている。彼女たちはフランスの女性警察官だ。ただし国家警察総局警護部(SDLP)に所属し、極秘任務、いわゆるSP(セキュリティポリス;フランス語ではofficier de sécurité=OSと呼ぶ)業務についている。この精鋭エリート集団は男性優位の職場でもある。700人いるSPのうち女性SPは50人に満たない。 32歳のジュスティーヌは、毎日140人のVIPの警護を担当する部署の一員になったことをとても誇りに思っている。この職務に就くことは、11年前に警察官に採用された時から彼女の生きがいであり、最終目標だった。「SDLPに所属すればそれまで自分が生きてきた環境とは全く違う世界や場所を垣間見られる。旅行の機会も増える」と彼女は志望動機を語る。ブロンドヘアにヘーゼルナッツの瞳を持つジュスティーヌは貧困率の高い地域として知られるセーヌ・サン・ドニ県勤務を経てパリ警視庁 コマンド対策部隊(BAC75N)所属となった。この精鋭部隊に女性はほんの数えるほどしかいない。一年前から彼女は米国大使デニース・キャンベル・バウアーの警護を担当している。イギリス系で英語を完璧に喋るジュスティーヌはまさに適役だ。物騒なパリ郊外から歴史を感じさせるアメリカ大使館へ移るまでの間には、SDLP選抜試験の試練を乗り越えなければならなかった。2013年に創設されたSDLPの前身、「公式旅行サービス部」(通称VO)の古き良き時代のように現役メンバーによる推薦で候補者が選ばれることはなくなり、現在では明確な採用基準による選抜が実施される体制が整っている。根っからのスポーツウーマンであったジュスティーヌは5ヶ月間を試験の準備に打ち込み、有酸素運動、格闘技、水泳を組み合わせた集中的なトレーニングで自らを鍛えた。