イオン買収のテーマパークが奇跡の復活…「値上げ」したのに客増加
子人10%以上、大人25%以上値上げ
値上げの議論のなかでアソビューが注目したのは、休日の「大混雑」だった。 カンドゥーの来場者数は、コロナ前を割っていると言え施設内が閑散としている……という状況ではなかった。 子どもたちに人気のある「お仕事体験」、例えば「銀だこ」や「アイスクリーム」「ポケモンセンタースタッフ」などは、開園後すぐに予約を済ませないとすぐに予約枠が埋まってしまうため、週末や連休中は開園前の早朝から、施設の入口に長蛇の列ができていたという。 行列ができる人気があるにも関わらず、なぜ値上げ判断を躊躇していたのか? それは「行列ができることが人気のバロメーター」という価値観があったからだという。 「行列はメディアでも注目される。並ぶことは価値があると思っている部分があった」(末松氏) こうした状況を受け、アソビューが提案したのが、来場者が集中する時期に値上げすることだった。 カンドゥーの従来の「子人」の入場料は平日3250円、休日や繁忙期は3960円の2種類で、大人は一律2000円に設定されていた。 それを2023年の夏からは、新たに「ミドルシーズン」と「スーパーハイシーズン」という区分を設けることに決めた。お盆などの「スーパーハイシーズン」の子人料金は、繁忙期価格から10%以上値上げし4500円、大人も25%値上げし2500円に設定した。 また2023年秋からは、振替休日の月曜日を「ミドルシーズン」と設定、子人料金は約17%値上げし3800円になった。 さらに学校などの団体客向けの平日割引価格を1400円から、70%値上げし2400円に設定した。
値上げで過去最高の来場者数に
値上げがもたらした効果は絶大だった。 値上げ後は逆に入場者数が増え、夏休み期間は開業当初並みを記録、さらに秋以降は過去最高を更新する月もあった。 「値上げ後には慢性的な赤字体質が黒字に転じました。加えて来場者のピークが分散するようになったことで、顧客満足度もあがり、三方よしの結果になった」(末松氏) カンドゥーでは今後、有料ファストパスのように、プラス料金を支払うことで優先的に予約ができる仕組みの導入も検討しているという。 ただし有料のファストパスは、お金をプラスして支払える場合は便利である一方、金銭的な理由で使えない来場者が出てくる制度でもある。 「例えば『混雑する週末しか行けない』『絶対にやりたい体験がある』『初めて行くので、上手に回れるかどうか不安』など思っている場合、有料ファストパスは時間の節約になり、また安心を買うことにもつながる。 一方で、『何度も来場しており立ち回りが上手な方』や『空いている平日に来店できる方』は、課金までして予約する必要はないと考えるケースもあると思います。 すべてを有料予約にするなどの話ではなく、さまざまな価値を両立できるように設計することが求められる」(末松氏) 有料ファストパスだけでなく、カンドゥーでは今後も「新たな価値の提供でマネタイズできる方法を考えていきたい」とする。 「まだ頭の中にあるレベルですが、お誕生日祝いでの来園も多いので、誕生日向けの特別プランもニーズがある。顧客満足度もあげながら、収益を高めていくディスカッションは今度もどんどんしていきたい」(末松氏)
横山耕太郎