〈自民党選挙裏金疑惑〉「すがっち」=菅義偉? 公職選挙法違反で実刑判決がくだった河井克行氏の自宅から見つかったメモの”疑惑”を菅氏に突撃取材
ばらまき 選挙と裏金 #5
政治家の河井夫妻が自ら現金を配って回った買収事件から発展し、中国新聞の取材班が政府・自民党の不透明なカネの問題に切り込んだ、渾身の調査報道をまとめた書籍『ばらまき 選挙と裏金』。 【スクープ画像】河井克行氏宅から見つかった「すがっち500」と書かれたメモ 書籍から一部を抜粋・再構成し、河井克行が自宅に残したメモにあった「すがっち 500」の疑惑について中国新聞の記者が菅元首相へ突撃取材した様子を紹介する。
「すがっち」と呼ばれたことはあったのか?
記者の河野は近づいて名刺を出した。「中国新聞の河野です」。菅は歩き続けながら、表情を変えずに受け取った。河野は臆せず質問を繰り出した。 ――河井案里氏側へ500万円を提供したというメモが押収されています。 「知らない」 ――500万円を提供しましたか。 「そんなことあるわけがない」 ――内閣官房の機密費からお金を出したということはないですか。 「ない」 ―本当にないですか。 「ない、ない」 菅は淡々と答えると、去って行った。短いやりとりから、菅はおそらく中国新聞のスクープの内容を把握しているように感じた。 メモの存在を聞いた最初の質問にも戸惑うことなく、きっぱりと「知らない」と答えていた。 きっと何を聞かれても否定するつもりだったのだろうと感じた。否定はされたが、接触できただけでも大きな収穫だった。 すぐに取材班にチャットで報告し、新たに中川も加わってあらためて国会内で待機した。 取材班の他のメンバーから、検察からの聴取はあったかどうか、「すがっち」と呼ばれていたかどうかを確認するよう指示され、菅が国会から退出する際のチャンスを狙った。 それから1~2時間後、菅は国会内の廊下に姿を見せた。今度は秘書が随行していた。 中国新聞の記者が出待ちしていると考えたからだろう。ただ秘書は河野の質問を遮ることはなく、菅は歩きながら質問に答えた。 ――検察からの聴取はなかったですか。 「そんなことはない」 ――克行氏から「すがっち」と呼ばれたことはあったのですか。 「それは知らない」 そこまで答えると、菅は「歩きながら、話しかけるのをやめてください」と話し、去って行った。この取材の最初から最後まで表情を変えることはなかった。