加山雄三「谷村君と何度も歌った『サライ』は、2022年の24時間テレビが最後に。あのとき、彼は歌って泣いていた」
◆「サライ」、つくってよかったよな 備前焼は楽しかったね。いくつもいくつもつくっていくと、自分の技量が上がっていくのがわかる。 ただ、俺の場合、つい競争心が生まれてくるんだな。谷村君に負けたくないと思ってしまう。 「加山さん、じっくりやりましょうよ。陶芸は勝負事じゃないんだから」 そんなふうに、彼にはよくたしなめられたよ。 谷村君との「サライ」は何度も歌った。24時間テレビのエンディングはもちろんだけど、さだ君の「夏長崎から」でも谷村君と歌った。二人で肩を組んで歌うと、2万人のお客さんも肩を組んで合唱してくれてさ。ステージにいる俺たちが感動しちゃうんだ。 「サライ」、つくってよかったよな。 そんなだからさ、谷村君の早い旅立ちはつらかったな。亡くなった後、カミさんと一緒にお線香をあげに行った。遺影があって、そのなかで谷村君がにっこり笑ってんだ。 「おい、俺も後から行くからな。遅くなるかもしれないけれど、待っていてくれよな」 話しかけたよ。 あっちの世界には時間の感覚がないという説もあるだろ。だから、そんなに待たせない気もするけれどな。 ※本稿は、『俺は100歳まで生きると決めた』(新潮社)の一部を再編集したものです。
加山雄三