春の訪れを告げる香り豊かなウメ
風にそよぐ葉、空に向かって伸びる枝。四季折々に、多彩な姿を見せてくれる樹木。『趣味の園芸』連載「木と暮らす12か月」では、「花が美しい」「葉が見どころ」など、毎月テーマに沿って「育てて楽しい樹木」を紹介します。お気に入りの木と、一緒に暮らしてみませんか? みんなのウメの写真 ■1月号 連載より(一部抜粋)
花も実も愛される、めでたい長寿の木 ウメ
日本の春を象徴する花といえばサクラを思い浮かべますが、いにしえにはウメこそが「春の花」として愛でられてきました。奈良時代、万葉人たちの花見といえば主にウメを観賞するもので、花を見て歌を詠じました。元号「令和」は、万葉集の「梅花の宴」の序文に由来することでも話題になりました。万葉集にはウメを詠んだ歌が100首以上もあり(一方、サクラを詠んだ歌は40首ほど)、ウメがいかに風雅な歌人たちの心を捉えていたかがわかります。 ウメは中国渡来の花木で、渡来の時期には諸説あります。今では品種は数百を数え、主に果実が梅干しや梅酒などに向く「実梅」と、花を観賞する「花梅」に大別されます。実梅は花も果実も楽しめて、丈夫で育てやすい果樹です。 ウメは全般に寿命が長く、生育は比較的早いほうですが、大木にはならず、剪定でコンパクトに仕立てやすい樹木です。「桜切るバカ 梅切らぬバカ」という言葉もあるように、適切な剪定をすることで新しく伸ばす枝に、多くの花芽をつけます。強剪定にもめっぽう強いので、大胆に樹形を変えることができるのも、ウメの醍醐味です。 (解説・山﨑隆雄) ●上の写真の「紅千鳥(べにちどり)」は、花梅の園芸品種。鮮やかな紅色の中輪一重咲き。花弁の内側に雄しべが変化した旗弁(きべん)がありこれを千鳥に見立てたのが品種名の由来。開花は遅めで2~3月ごろに咲く。 『趣味の園芸』2024年1月号 連載「木と暮らす12か月」より