大ヒット『なぜ働いていると本が読めなくなるのか』三宅香帆さん、原点は故郷・高知の小学校「働き方改革で読書を」
“働き方改革”でホントに休めてる?
読書の魅力である偶発的な“ノイズ”は、しかし見方を変えれば「自分にとって不必要な情報」でもある。だから効率や自己責任が重視される現在の労働環境の中では、読書が遠ざけられてしまうのではないか?そう指摘する三宅さんは、それでも「働きながら本が読める社会」を目指すべきだという。鍵を握るのが、本書の大きなテーマである“働き方改革”だ。 三宅香帆さん: 私は1994年生まれなんですけど、自分たちの上の世代は、働き方改革をするのに精いっぱいだった世代だと思っています。「残業はやめましょう」とか「できるだけ休みを取るようにしましょう」と言われてきたと思うんですけど、“帰って何をするのか”とか“休みを取っても、ちゃんと精神的に休めているのか”というと、まだまだ問題は残っている。 なので、自分たちの世代が、ちゃんと働き方改革をした上でしっかり精神的にも休めるような社会を作れたらな、と。 (今回の著書には)“働きながら本が読める社会”を働き方改革の次のステップとして提唱している面があります。 ーー現在の働き方改革には違和感がある? 違和感というか、何か足りない部分があるんじゃないかと。 『なぜ働いていると本が読めなくなるのか』というタイトルに対して「働きながらゆっくり趣味の本を読もうなんて、ぜいたくでは?」という声が結構あったりするんですよ。 本も読めずに働いている人が多い社会は、勉強もできない社会だと思いますし、それは働くことに関してもあまり良い効果をもたらさない。もっと働き方がいろいろ議論されて見直されていくと、良い効果があると思っているんです。
ノイズを入れるためにテクノロジー活用を
ーーテレビの世界でも、本筋とは直接関係がないように見えるノイズが、番組やVTRの面白さにつながることがあります。ただ、ノイズを盛り込んで上手にまとめるためには、取材や編集に時間がかかり、働き方改革の中で難しくなっている側面もあります。 三宅香帆さん: 自分も仕事をしている中で、“ノイズを入れるために時間をかけるべきところ”と“本当は時間をかけなくてもいいけど、慣習的に時間をかけてしまっているところ”があると思っています。 時間を決めて「じゃあ、そのノイズを取り入れるにはどうしたらいいのか?」ということをやっていくと、時間をかけるところとかけないところが自分の中でメリハリがつくんじゃないかなと。 これだけテクノロジーが発達して、昔よりも簡略化できるところはできるはずです。 礼儀みたいなものを重んじる、あまり簡略化できないところはあるので、バランスはすごく難しいと思いつつ、自分も試行錯誤しているところです。 ーーノイズを取り入れるための時間は大事にしたほうがいい? そう思います。たくさん働ける人しか働けない社会だと、労働人口が減っていくままになってしまう。人口も減っている中で、仕事を楽しく、かつ、クオリティーをどんどん上げていくにはどうしたらいいかというと、やっぱり時間をかけるところとかけないところを取捨選択していくしかないと思いますね。