「レクサスブランド再定義」「低価格EVで市場席巻」…トヨタが“生き残る”ために必要な戦略とは?
チームトヨタで低価格EVを開発
今後はクルマの知能化が進むと書いてきたが、ここでは逆のことを書く。全ての顧客が「クルマが知能を持つこと」を望んでいるわけではないからだ。 日本の家電メーカーが衰退した最大の理由は、中国や韓国のメーカーが機能を絞って低価格な商品を出してきたことにある。今度は日本が逆に低価格EVで実用市場を取りにいくことを考えたらどうだろうか。 確かに、現時点で低価格EVの市場は中国メーカーの独壇場である。2020年に上汽通用五菱汽車が「宏光MINI」という軽自動車サイズのEVを日本円で45万円という価格で発売し、中国国内では一時はテスラを抜いて販売台数1位になった。 宏光MINIは航続距離が120㎞と短く、急速充電に対応していない等の理由で販売は急減したが、今度はBYDが2023年4月にハッチバックタイプの小型EV「SEAGULL」を150万円で発売して大ヒットになっている。この手の低価格EVは中国に勝てないと思う人が多いだろう。 しかし現在、米欧では中国車を締め出す動きが出始めている。米国はIRA(インフレ抑制法)により中国製EVを実質的に排除し、2024年5月から中国製EVに100%の輸入関税を課す。 EUも中国の廉価EVは「政府から不当な補助金を受けている」として2024年7月から高率の追加関税をかけることになった。この状況が続けば日本車にもチャンスがある。 2023年12月、トヨタと資本提携しているスズキがインドで自社開発のSUVタイプのEVを生産し、日本にも輸出をするとともに、トヨタはそのモデルの供給を受け、欧州で「トヨタブランド車」として販売することを検討しているとのニュースがあった。 スズキはインドでシェア4割を占めるナンバー1ブランド(ブランド名:マルチ・スズキ)であり、長年の経験から低価格車づくりの経験値が高い。 トヨタの子会社であるダイハツも含めて、チームトヨタの総力を挙げて「低価格EV」をつくり、中国メーカーが締め出されつつある米国や欧州で販売する戦略は十分にあり得るのではないだろうか。 文/髙田敦史