「ノ社問題」で注目 臨床試験の流れは?
ノバルティスファーマによる「臨床試験」への関与が問題となっています。同社が製造・販売する高血圧治療薬・バルサルタンに関連する研究で組織ぐるみのデータ操作をしていたとして厚生労働省は同社を薬事法違反で検察に告発、東京地検特捜部が同社などを家宅捜索する事態に発展しました。
「治験」と「臨床研究」
そもそも薬の「臨床試験」はヒトを対象に薬の効果を明らかにする研究ですが、臨床試験のうち製薬企業が開発する化合物を薬として承認を受けるために行われる試験を「治験」、これとは別に医師が自主的に行う臨床試験を「臨床研究」と呼びます。 治験は主にフェーズ1~3までの3つの段階に分けられています。「フェーズ1」は健康な人を対象に化合物の安全性の検討を中心に実施。これで問題なければ「フェーズ2」として少数の患者で有効性、安全性をチェックし、さらに「フェーズ3」でより大規模な患者数で有効性、安全性を調べます。製薬企業は一連の試験データを提出して厚生労働省に製造承認の申請を行い、承認後、薬価が定められ発売されます。 一方、臨床研究は、例えばある病気の薬のAとBのどちらがより有効かというような医師の疑問を研究テーマとします。対象の病気にもよりますが、数千人から万単位の患者を登録して行うことも稀ではありません。
ただ、いずれも複数の医師が参加するため、治験では治験責任医師、臨床研究では主任研究者と呼ばれる代表者が置かれます。また、実施計画書を作成し、実施する医療機関の倫理委員会から実施に当たっての承認を得ることが必要です。 倫理委員会承認後は治験責任医師あるいは主任研究者のもと事務局、モニタリング・監査担当、データマネージメント担当を配置。参加する医師は計画書に沿って薬を投与し、得られたデータを予め構築されたシステムに入力、データの精査や確認後に集積されたデータにロックをかけ、医師とは別の統計解析専門家などが計画書に沿ってデータの統計解析を行い、責任者の医師に戻されます。それにより論文が執筆されます。