地震多発、古い建物のアスベストが「危ない」 長野県が調査団体と連携
長野県は災害時などにアスベスト(石綿)の実態を速やかに調査するため、アスベスト調査3団体の協力を求める協定を締結しました。飛散したアスベストは、吸い込むと肺線維症(じん肺)、悪性中皮腫の原因となり肺がん発生の可能性も指摘されています。これまでに多くの建造物に使用され、災害時の飛散は深刻な被害の恐れも。県はアスベストの調査で被害の防止を図るとしています。調査団体との協力協定は県レベルでは初めて。 【写真】終わらないアスベスト被害 今後迎える高度成長期のビル解体にどう対応
災害時のアスベスト被害の調査で協定
協定は「災害時における被災建築物のアスベスト調査に関する協定」で、長野県と建築物石綿含有建材調査者協会、日本アスベスト調査診断協会、長野県環境測定分析協会が9月18日、災害時のアスベスト調査で協力態勢を取る協定を締結しました。県によると、同様の協定は愛知県豊田市、福岡県福岡市のほか、国の関係機関と関東地方の広域協定がいずれも今年締結されていますが、県レベルでは初めてのことだといいます。 具体的には、県と各団体が協力してアスベストが飛散する恐れのある被災建築物を速やかに調査。アスベスト含有建材の施工箇所、露出や破損の状況などを調べ、飛散防止の対策を進めます。 調印式では、阿部守一知事が「災害時にアスベストの被害が出ないとも限らない。ぜひ専門家の協力をお願いしたい」とあいさつ。業界団体も「東日本大震災でも国に協力してきたが、最近震災が多発しており、調査に手が回らない状況にもなっている」「調査の専門家を増やし、被害が拡大しないよう頑張りたい」などと述べました。 アスベストは天然の繊維状鉱物で、耐熱・耐薬品性などの性質が注目され、建造物の吹き付け利用などに9割が、自動車のブレーキライニングなどに一部が利用されてきました。30年ほど前までは毎年20~30万トン輸入されていましたが、被害が問題になったことから2006(平成18)年末以降の輸入はゼロとなっています。 吸い込んだ石綿は長期間にわたって肺や気管支に刺激を与え、じん肺などの原因に。県によると、主な疾患の中皮腫の場合は、石綿の吸引などで影響を受け始めてから20~50年の長い潜伏期間があり、最近になって患者の顕在化が深刻な問題になっています。労災認定は2004年の128人が、2008年には550人に急増しました。