米国債下落、利回りは今年最高の水準-インフレ懸念と好調な米統計で
(ブルームバーグ): 15日の金融市場では米国債が下落し、年限全般で利回りが今年最高の水準に達した。イランとイスラエルの対決激化は当面回避されるとの期待が浮上、世界経済を悩ませているインフレ圧力へと関心が戻り、先週末を前に市場で支配的だった米国債への逃避買いが巻き戻されている。
市場予想を上回った米小売売上高も利回り上昇を後押しした。この統計の発表後、2年債利回りは5%に迫り、10年債利回りは一時10ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)上昇し4.62%と、昨年11月14日以来の高水準を付けた。
イスラエルはこれまでのところ、イランが仕掛けた初の直接攻撃に対する報復を控えている。米国債の下落はこの安心感を反映しているが、中東情勢の不安定化による石油価格上昇や根強いインフレへの不安も背景にある。
これにより米連邦準備制度の利下げ開始が一段と後ずれする可能性もある。米国では予想を上回るインフレデータの発表が続き、トレーダーは金利見通しの修正を既に強いられた。市場で現在織り込まれている利下げ開始時期は、早くて7月だ。
サクソ銀行の債券戦略責任者、アルテア・スピノッツィ氏は、「市場はまず反射的に国債など安全資産への逃避で反応したが、インフレ再燃に対する懸念も強まっている」と指摘。「中期的に利回りが上昇する可能性も排除できない」と続けた。
今のところ、原油相場の動きは比較的抑えられている。15日の取引で北海ブレント原油先物は一時1バレル=91ドルを超えたものの、その後90ドルを割り込んだ。それでも依然として年初来高値の付近にあり、昨年12月の安値である72ドルを優に上回る。
ヘンリー・アレン氏、ジム・リード氏らドイツ銀行のストラテジストは「数カ国で根強いインフレが既に懸念されている中で、原油高の影響が世界中に波及するだろう」とリポートで指摘した。
原題:US Treasuries Fall as Inflation Fear Returns Post Haven Rush (3)(抜粋)