【ホープフルS】クロワデュノールは3冠すら視界に!涙の北村友「欠点、課題はないと思います」
<ホープフルS>◇28日=中山◇G1◇芝2000メートル◇2歳牡牝◇出走18頭 歓喜の男泣きだ-。北村友一騎手(38)が落馬負傷から復帰後初、自身4年ぶりのG1制覇を果たした。単勝1・8倍の1番人気クロワデュノール(牡、斉藤崇)を危なげなくエスコート。3戦無敗でのG1初制覇に導いた。勝ち時計は2分0秒5。復帰に1年1カ月を要した大けがを乗り越え、同馬主、同厩舎の名牝クロノジェネシスに引けを取らぬ素質馬に巡り合った。 ◇ ◇ ◇ 言葉に10秒、詰まった。「またG1を勝つことができました! あの…」。壇上の北村友騎手が右手で左目を覆う。目、鼻、口をくしゃくしゃに寄せる。走馬灯のように駆け巡る記憶が、すすり声に変換された。 北村友騎手 本当にたくさんの方々に助けていただいて、応援していただいて、ここにまた導かれたんだと思います。この場をお借りして、本当に皆さんに感謝の気持ちを言いたいと思います。ありがとうございます。 絶望からはい上がった38歳が、感極まった。 21年5月2日。事態は暗転した。阪神2Rで落馬。砂上に体をたたきつけられ、椎体骨折、右肩甲骨骨折。背骨は8本、首の骨は数本折れた。「心が折れそうになったことは何度もありました」。それでも周囲の励まし、そして「馬に乗ることが本当に好き。乗っている時が自分の人生にとって一番楽しい」とあふれる初心が、不屈の闘志をかき立てた。1年1カ月を要し、戦線復帰。地道に白星と信頼を積み重ねてきた。 だからこそ、この1勝は逃せなかった。2戦2勝で重賞を勝ったクロワデュノールを「信じていました」。道中は馬群の外を追走。向正面で他馬にまくられても、動じなかった。4角3番手。「勝つと思っていました」。前2頭を残り200メートルで交わした。2着に2馬身差。堂々と押し切った。「欠点、課題はないと思います」と絶賛しか出てこなかった。 再び巡り合えた。主戦を担ったG1・4勝のクロノジェネシスとは同陣営。「かぶるところはありますね」と20年の有馬記念制覇も思い出した。クラシック最有力に名乗りを上げ“3冠”すら視界に入る。「来年はまた大きいところで活躍したいと思いますので、またともに歩んでください。また努力していきたいと思います。応援よろしくお願いします」。もう涙はいらない。2025年は必ず、喜びに満ちた1年にしてみせる。【桑原幹久】 ◆クロワデュノール▽父 キタサンブラック▽母 ライジングクロス(ケープクロス)▽牡2▽馬主 (有)サンデーレーシング▽調教師 斉藤崇史(栗東)▽生産者 ノーザンファーム(北海道安平町)▽戦績 3戦3勝▽総獲得賞金 1億1678万9000円▽主な勝ち鞍 24年東京スポーツ杯2歳S(G2)▽馬名の由来 北十字星(フランス語)