40代エンタメライターの心に刺さった国内ドラマ5作!「好きなドラマがあれば、毎日はちょっと楽しくなる」【エンタメベスト2024】
4位『3000万』
どうしようもないクソゲーを生きる私たちへ こちらも、いわゆる普通の中年女性が主人公。ただし、『団地のふたり』からは一転。ひょんなことから大金を手にした主婦が裏社会へと取り込まれていくノンストップクライムサスペンスです。 主人公は、ある地方都市で暮らす主婦の祐子(安達祐実)。家族は、元ミュージシャンの義光(青木崇高)と最愛の息子・純一(味元耀大)。共働きとはいえ、非正規で家計は火の車。いつも、いつも、お金の心配をしている。祐子の心は、余裕のない生活にすり切れていた。 そんな中、あるアクシデントで3000万もの大金が祐子たちの手元に転がり込む。お金の持ち主は、謎の女(森田想)。しかし、彼女は事故で意識不明。このまま目を覚まさなければ、誰にもバレない。耳元で囁く悪魔の声。はたして祐子はどの道を選ぶのか――。 この作品の魅力は、先の読めないストーリー展開です。祐子も義光も、悪事を働けるような人間じゃない。ただ、ちょっと道を間違えただけ。なのに、元の道へ引き返そうとすればするほど、とる選択がすべて裏目に出て、さらなる地獄コースへ強制連行。これがゲームなら、ただのクソゲーです。でも、私たちの人生なんてそもそもそんなものなのかもしれません。 安全と思っている道は、綱渡りのロープみたいなもので。一歩踏み外したら、簡単に人は転げ落ちていく。じゃあ、そのギリギリのデッドラインを分けるものは何なのか。祐子と、終盤で登場する犯罪組織のボスは何が違うのか。気づけば、自分の目の前に3000万の大金を積み上げられているような気持ちになります。 練り込まれた構成と、ヒリヒリするほどリアルな人物描写。そして、安達祐実を筆頭とした手練たちの名演技。つい止まらなくて一気見になること必至。海外ドラマに夢中になっている人にこそオススメしたい一級品の国産エンターテインメントです。
横川 良明