車発見「頼むから無事で」 奥能登豪雨 31歳女性、職場から戻らず
●輪島・町野の中山さん 話し好き、いつも笑顔 奥能登豪雨の被災地では24日、「発生後72時間」を過ぎても懸命の捜索活動が続いた。能登町久田では同日朝、連絡が取れなくなっている中山美紀さん(31)=輪島市町野町寺地=の軽自動車が発見され、警察や消防が周辺を探したものの本人の姿はなかった。「頼むから無事でいて」。家族は祈るように話した。 母親によると、中山さんは穴水町にある清掃会社でパートとして働いており、豪雨当日の21日は午前6時過ぎ、町野町東大野の仮設住宅から職場へ向かった。到着後、雨がひどいため早めに帰宅するよう指示を受け、午前11時過ぎに職場を出発した後、行方が分からなくなった。 「いつも通り、笑顔で行ってきますって、出掛けていったのに」。母親は顔を覆った。車が発見された場所は中山さんがいつも使っているルートではなく、雨の影響で迂回しようとした可能性があるという。 24日午前10時ごろ、警察から「中山さんが乗っていたとみられる車が能登町久田で見つかった」との連絡を受け、母親ら家族は確認のため現場を訪れた。中山さんの軽自動車は右前輪が側溝に落ち、運転席側には水がたまっていた。ナンバープレートには草が引っ掛かっており、車は水につかったとみられる。道路は隣を流れる川が増水し、えぐられていた。 家族によると、この道は中山さんが以前の勤務先で通勤の近道に使うこともあった。元日の地震で道路が陥没したことから父親が「絶対に使うなと口酸っぱく何度も言っていた」という。 父親は「脱輪して、慌てて車の外に飛び出たんじゃないか。川に流されていなければいいが」と話し、母親は「話し好きで、にこにこ笑顔をたやさない、かわいいねって周りからよく言われた。頼むから無事でいてほしい」と憔悴(しょうすい)した表情で語った。 中山さんは祖父母と両親、弟の6人暮らし。能登半島地震で自宅が倒壊し、避難生活を経て6月に仮設住宅に入った。地震の影響で仕事を失い、9月上旬から新しい職場で働き始めたばかりだった。 ●祖父「なんで若いもんが」 祖父の勝さん(86)は「全て地震のせいだ。なんで若いもんがこんな目に遭わんといかんのや」と悔しさをあらわにした。