「本音を聞きたい」公安委の要望で実現した県警職員との座談会。公開したのは冒頭のあいさつだけ。理由は「カメラがあると萎縮するから」
鹿児島県警の不祥事を巡り、県警を管理する「県公安委員会」の在り方が問われている。県民の代表と位置付けられ、警察業務に県民の考えを反映させるという任務を負うが、活動内容が知られる機会はほとんどなく、機能しているか疑問視する声もある。連載「検証 鹿児島県警」の第2部は、県公安委の実態を捉え、県警の信頼回復へ果たすべき役割を考える。(連載・検証鹿児島県警第2部「問われる公安委」①より) 【写真】県警職員との座談会に臨む石窪奈穂美・県公安委員会委員長(左)=7月1日、鹿児島市の県警本部
県公安委員会の石窪奈穂美委員長ら委員3人は7月1日、県警本部の一室で、県警職員15人と顔を合わせた。現職警察官らが相次いで逮捕される異常事態を受け、職場環境の問題点について「職員の本音を聞きたい」と県公安委側が要望し、座談会が設けられた。 石窪委員長らの冒頭あいさつと参加者の自己紹介が済むと、「記者の方は退室をお願いします」と県警総務課の担当者が報道各社に促した。非公開で約1時間半に及んだ座談会の内容は、会終了後に監察課の担当者が説明した。委員への取材も認められなかった。 同課によると、警察官や事務職員が参加し「上司の指導が響かない」「幹部の研修を検討してほしい」といった意見が出たという。 委員と職員とのやり取りを公開しなかった理由について、県公安委は「自由闊達(かったつ)に意見交換したかった。カメラが入ると職員の萎縮を招き、生の声を聞き取れない恐れがあった」と同課を通じて回答した。
■ □ ■ 公安委員会が表に出る機会はほとんどない。制度は古く、1947年の旧警察法制定までさかのぼる。警察組織の独善化を防ぎ、政治的中立性を保つため、戦後に設置された。「国民の良識を代表する者」でつくる合議制機関とされる。 警察法43条の2では、職員の不祥事の発生など「必要があると認めるとき」には、警察に個別具体的な指示ができると定めがある。都道府県公安委員会は、各警察から施策や治安状況などについて報告を受け、指導、助言する役割を担う。 鹿児島県公安委は現在、消費生活アドバイザーと医師、弁護士の3人で構成する。非常勤で任期は3年。再任は2回に限りできる。 委員を決める県は、県警から提供される候補者の参考情報を基に選考するのが慣例となっている。最終的には県議会の承認を得て、知事が任命する。県警総務課によると、47年の制度創設以降、会社役員や医師、弁護士、大学教授など38人が選ばれている。