飛騨の名湯でリーズナブルに温泉ざんまい!「鍋バイキング」やアイス食べ放題も好評
深山桜庵 別館 湯めぐりの宿 平湯館
松本駅からバスで1時間30分。平湯温泉は、福地(ふくじ)温泉、新穂高温泉など五つの温泉のある奥飛騨温泉郷の玄関口にある。北アルプスの山々に囲まれた温泉街には湯けむりがたなびき、冬の雪化粧もさぞかし映えるに違いない。 目当ての「湯めぐりの宿 平湯館」(以下平湯館)は、平湯バスターミナルから徒歩3分ほど。創業100年という歴史ある宿の経営を共立リゾートが引き継ぎ、2021年にリニューアルオープンした。この宿を選んだのは、「肌にまとわりつくようだ」と評判の温泉にひかれたからだが、老舗の宿がどう変身したのか、のぞいてみたい気持ちもあった。 玄関を入ると、庭園を一望する重厚なロビーに迎えられる。聞けば、モダンで使い勝手がいいように手は入っているが、建物の造りやレトロなガラス窓などの希少な調度はあえてそのままにしたのだという。古き良き温泉宿の趣が館内の随所に残り、懐かしい気分になった。
さっそく、二つの自家源泉をかけ合わせた宿自慢の温泉に向かう。 「木響(ききょう)の湯」と「仙人の湯」の2か所があり、時間で男女入れ替え制となっている。「木響の湯」にはヒノキの東屋(あずまや)風呂と岩露天風呂の二つがある。湯けむりに包まれた東屋風呂の明かりが、ぼんやりと浮かび上がるさまは幻想的だ。しばらくつかっていると余分な力が抜けて、なんだかそのまま湯と同化してしまいそうだ。 「仙人の湯」には、天井が高く広々した内湯と50人は入れるという大露天風呂がある。翌朝、大露天風呂に体を沈めると、湯けむりの向こうには雄大な山々……、文句なしの開放感だ。とうとうと流れ込むかけ流しの湯はやさしい肌ざわりで、湯上がりは手のひらまでしっとりしていた。
きめ細かいサービスが満載
食事はバイキングスタイルだが、2人がけ、4人がけなど、テーブルがゆったり点在しているので、落ち着いた雰囲気で食事を楽しめる。郷土料理、刺し身、天ぷら、飛騨牛コロッケ、小籠包……、和洋中華の料理が所狭しと並んでいる。 好評なのは、平湯館オリジナルの「鍋バイキング」。ずらっと並んだ野菜や肉など好きな具材を鍋にとり、固形燃料を使って自分のテーブルで温めて食べる。熱々がうれしいのはもちろんだが、ひと手間かけて鍋を囲むことで、夕食のテーブルにぬくもりが生まれるから不思議だ。 平湯館総支配人の小森亮治さんは、宿の特徴をこう話す。 「共立リゾートでは、すでに平湯温泉に高級志向の『匠の宿 深山桜庵』があります。そこで平湯館は、リーズナブルに3世代やグループ旅行など、異なる客層の方々にも楽しんでもらえるよう、カジュアルな路線を打ち出すことにしたんです」 部屋タイプも豊富で、館内に卓球場やカラオケルームなどの娯楽施設やコンビニもある。会席料理は敷居が高い子どもとも、バイキングなら一緒に手軽に楽しめる。ソフトドリンクも無料で飲み放題だ。 和室でも応接セットやローベッドを備えるなど、高齢者や外国人客への配慮も手厚い。さらに、アイス食べ放題(時間限定)、夜鳴きそばの提供など、共立リゾートならではの定番サービスも受けられる。きめ細かいもてなしに、気が付くと居心地がよくなっている。 旅の目的が多様化し、外国人観光客も急増する中、一つの新しい宿のかたちを見たようで、もう1泊してみたくなった。 文/高崎真規子 写真/三川ゆき江 湯めぐりの宿 平湯館 2人1室利用 大人1人 1泊2食・平日利用17,200円~ 電話0578・89・0012 高山市奥飛騨温泉郷平湯726 ※「旅行読売」2024年1月号の特集「1万5000円で泊まる名湯の宿」より