液状化地域4割が転居 高岡・伏木石坂自治会
●コミュニティー存続危惧「曳山祭の財源心配」 能登半島地震による液状化被害を受けた高岡市伏木地区で住民の流出が深刻化している。伏木曳山祭(ひきやままつり)の山町である石坂自治会では28日までに、全69軒のうち約4割の26軒が転居を決めた。自治会からは、残る住民のごみ当番や回覧板など地域活動の負担が重くなるほか、曳山祭の財源となる自治会費の不足を心配する声が上がり、地域コミュニティーの存続が危惧されている。 伏木校下自治会連絡協議会(伏木自連協)に所属する全18自治会によると、伏木地区1900軒のうち、現時点で78軒が既に転居したか、転居の意向を示している。26日、伏木コミュニティセンターで開かれた会合で報告された。 18自治会のうち、転居数が最多となった石坂自治会では全体の37・6%に当たる26軒、次いで中道自治会は全60軒のうち25%に相当する15軒が転居・転居予定となっている。いずれも特に液状化の被害が大きい地域という。 石坂自治会は、富山湾や小矢部川に近く、住宅の傾きや電柱の沈下、道路の陥没などが起きた伏木錦町の住民で構成する。転居を決めた26軒のうち、いずれ地元に戻る予定なのは2軒にすぎず、そのほかは県外の親類宅や市内のアパートなどに引っ越した。3月から5軒の建物が解体される。 転居理由として、住民からは「家が傾いて、もう住めない」「ここに住み続けるのは不安」との声が上がる。 石坂自治会の二口勇平会長(71)は、地域の高齢化が進んでいる上、地震による転出が追い打ちを掛け、回覧板や班長業務などの自治会活動が困難になると不安視する。 ●道路、下水道復旧 住民「もっと早く」 22日に伏木コミュニティセンターで開かれた復興・復旧連絡協議会では、高岡市側から「道路復旧は1年、下水道復旧は2年掛かる」と説明されたという。二口会長は「これでは、まだ転居を迷っている人も出て行ってしまう」と漏らす。 石坂町は「けんか山」で知られる伏木曳山祭(ひきやままつり)の山町でもあり、二口会長は「住民が減って自治会費が集まらなくなれば、将来、山(や)車(ま)が出せなくなるかもしれない」と不安を募らせる。 伏木地区では、地域の震災復旧とまちづくりを考えるための協議会が設置され、県内外から伏木地区への「復興応援協力金」を受け付ける口座を開設。転居を検討する世帯に、どういった住宅支援を求めるかアンケートも実施している。 すでに、住民からは「道路や下水道をもっと早く直してほしい」「住宅、生活再建の支援充実を」「仮設住宅を建設して」といった要望が上がっており、協議会は結果を取りまとめ、地元の団体から市に要望する方針だ。 伏木校下自治会連絡協議会の坂廣志会長(77)は「人口流出が止まらず、このままだとコミュニティーが崩壊してしまう。生活インフラの整備と被災者の手厚い支援が必要だ」と話した。