「大阪のY字路100」調査し選定?平成の町人学者が研究報告
大学の客員研究員として地域の観光振興策を提案
大阪府立大学21世紀科学研究機構大阪検定客員研究員として研究調査に取り組む「なにわなんでも大阪検定」(大阪商工会議所主催)1級合格者による研究成果報告会が26日、大阪市中央区の大阪歴史博物館で開かれ、11名の研究員が多様なテーマでフィールドワークに基づく新たな知見を発表した。ご当地検定合格者が、大学の客員研究員として地域の観光振興策を提案する取り組みは、全国でも他に例がない。
「大阪のY字路100」を調査して選定
一番手高柳淳一さんの研究テーマは「大阪のY字路・都市景観としてのY字路とその意味」。作家横尾忠則さんの絵画「Y字路」シリーズに触発され、大阪市内をくまなく歩いてY字路を調査し、「大阪のY字路100」を選定した。 Y字路は道路の交差角度が違うと、情景や雰囲気がかなり異なってくる。そこで、高柳さんは「北新地20」「千日前41」など、「地名+Y字の角度」方式でY字路愛称案を提案している。 生野区内の今里筋では、「中川四10」「中川六10」「田島10」と、Y字路が連続して出現する。南北方向に並行して走る旧道を、新たに今里筋が少し南西にずれた角度で次々と貫いたため、連続Y字路ができたという。 高柳さんは「Y字路の角地にはなぜか、焼肉店や寿司屋が多い。ほこらや地蔵尊がまつられるなど、いやしの空間になっているケースも少なくない」と報告。「Y字路にはまちなかのパワースポットのような気配があるのではないか」と分析し、粘り強い調査活動に基づくY字路研究の一端を披露した。
名人松鶴師匠が弟子を鍛えた「松鶴坂」
ふたり目に登壇した辻本伊織さんは「大阪の坂道研究・無名坂に名前をつけよう」のテーマで発表。東京の「乃木坂」のような著名人にちなむ人名坂が大阪には少ないとの考えから、大阪でも人名坂を創設して文化振興や観光推進につなげようと提案した。 庄野貞一帝塚山学院初代院長を父に持つ児童文学者の英二と、芥川賞作家潤三の兄弟。庄野ファミリーへのリスペクトを込めて顕彰するのが、「庄野坂」(大阪市住吉区)だ。「直木坂」(同中央区)は、直木賞の由来でもある作家直木三十五が生まれ育ったまちにあり、直木自身も繰り返し歩いたことだろう。「大阪の文学」を身近に感じることができる。 上方落語の名人6代目笑福亭松鶴にけいこをつけてもらうため、弟子たちが上り下りしたのが、「松鶴坂」(同住吉区)。松鶴は住み込みの内弟子を取らず、通い弟子を厳しく鍛え上げた。 弟子たちにとって、けいこに向かう上り坂はつらく、けいこが済むと緊張感から解放されて坂道を駆け下りていく。一見平凡な坂であっても、「松鶴坂」と名付けることで、芸に生きる松鶴一門の心もようまでが濃密に立ち現われてくるようで、思わず坂を歩いてみたくなる。 続く9人もパワーポイントを巧みに操作しながら、持ち時間の15分をフルに使って研究成果を発表した。