脱炭素は「グリーン詐欺」石破首相は日本経済の崩壊招くエネルギー政策転換を トランプ大統領復活で〝気候変動バブル〟が一変
そして、世界情勢の緊迫により、気候変動問題自体がもはやオワコンになる。
日本はパリ協定から離脱すべきだ
ロシアは、石油と天然ガスを採掘して輸出することで経済を維持し、軍事費を賄っている。CO2削減のためといって、それを止めるはずがない。中国もインドも、ロシアから大量に石油を買っている。G7が説教しても止めるはずがない。
すべての国が高いコストを受け入れ、国際協調してCO2を大幅に削減する、などというシナリオは、もともと妄想に過ぎなかったのだ。
世界を見渡せば、「CO2ゼロ」を本気で実現しようとしている国などごくわずかで、日本、ドイツ、英国ぐらいだ。この3カ国とも、産業は空洞化し、経済は衰退している。
「原子力も石炭も禁止する」という無謀なエネルギー政策を続けてきたドイツは経済が疲弊し、打開策の一環として「再エネ補助金の撤廃」などを求めた自由党が離脱して、ついに連立政権が崩壊した。3月には総選挙が行われる見込みとなった。すでに人気が地に落ちている緑の党は消滅の危機を迎える。ドイツの「脱炭素」には急ブレーキがかかる。
日本はどうか。
石破首相は、10月30日に開催されたGX推進会議で、年内にエネルギー基本計画を策定するよう指示した。菅義偉、岸田文雄政権に続いて「CO2ゼロ」に突き進むらしい。
これだけ世界情勢が大変動しているのに、2035年や40年のCO2削減目標を「野心的に」設定し、パリ協定に提出する構えのようだ。
だが、それではますます日本の産業は空洞化し、経済は崩壊する。完全な錯誤だ。
政府は無謀な数値目標設定を止め、来年2月が期限となっているCO2削減目標のパリ協定への提出は延期して、パリ協定から離脱すべきだ。日米が離脱すれば、パリ協定は事実上消滅する。
その後は、米国やグローバルサウス諸国と協調しつつ、安全保障と経済を重視する本来のエネルギー政策に戻ればよい。その一環として米国から石油やガスを買うことは、トランプ氏とのディール(取引)にもなるだろう。
■杉山大志(すぎやま・たいし) キヤノングローバル戦略研究所研究主幹。1969年、北海道生まれ。東京大学理学部物理学科卒、同大学院物理工学修士。電力中央研究所、国際応用システム解析研究所などを経て現職。IPCC(気候変動に関する政府間パネル)、産業構造審議会、省エネルギー基準部会、NEDO技術委員などのメンバーを務める。産経新聞「正論」欄執筆メンバー。著書・共著に『「脱炭素」は嘘だらけ』(産経新聞出版)、『亡国のエコ』(ワニブックス)、『SDGsエコバブルの終焉』(宝島社新書)など。