自動車評論家の飯田裕子さんがアルピナ、キャデラック、ジャガー、ミニ、VWの5台のガイシャに一気乗り!「輸入車は感性を刺激し豊かにしてくれる、一番身近にある芸術品のような存在」
私の元気の源です!
大磯プリンスホテルの大駐車場に集まったガイシャ36台に36人のモータージャーナリストが試乗する「エンジン・ガイシャ大試乗会」。飯田裕子さんが乗ったのは、BMWアルピナXB7、キャデラック・エスカレード、ジャガーIペイスRダイナミックHSE、ミニ・ジョン・クーパー・ワークス、フォルクスワーゲンID.4ライトの5台。その評価やいかに? 【写真49枚】モータージャーナリストの飯田裕子さんが乗りまくった輸入車5台の詳細画像はこちら! ◆飯田裕子さんにとって「ガイシャ」ってなんですか? 私にとって輸入車は、私の感性を刺激し豊かにしてくれる、一番身近にある芸術品のような存在とも言えます。外観の彩りをはじめ、内装に至ってはスティッチの風合いにさえデザイナーの感性に思いを巡らし、エンジンのビート感、BEVの静寂さ、HEVのテクニカルな制御、コーナリングの美しさに一喜一憂。それらの豊かな個性を最も味わい深く楽しめるのが海を渡って各国からやってくる輸入車です。 早朝会場に向かう道中、大磯ICを降りたあたりから見慣れない2台のポルシェと私のボクスターの3台が偶然連なり、到着したらEPC会員と分かりました。まさに車好きが集うクローズド・イベント感を抱き、取材ながらいつも以上にワクワク。カーボン・ニュートラルや自動運転に向かう今、何が正解かなんて個人次第という今、それらに出会うワクワクを今年も自分の元気の源にしていきたいと、この日、改めて思えたのでした。 ◆BMW アルピナ XB7「買うなら、いまでしょ!」 ドライビングの真価を追求するBMW Mに対し、上質な運動性能と共にラグジュアリーを際立たせるアルピナ。そんなアルピナ最大の収納力を持つXB7は空間のしつらえ、ドライブ・フィールのどちらかに少しでも妥協があればこの世界観は成立しないだろう。と、私にとってはとりわけ大きなサイズのXB7を走らせて改めて思った。 最大7名が乗車可能なXB7は、収納可能な3列目シートにもアルピナがこだわるラヴァリナ・レザーを使用。また特筆したい動力については、アルピナのマイスターによる、大量生産では成し得ないハンドメイドの4.4リッター V8ツインターボ=多気筒大排気量エンジンの、強く優しく滑らかな加速とアルピナ仕立てのV8サウンドとの動的シナジーは唯一無二。 さらに、最新のテクノロジーも採用するコーナリングも、驚くほど姿勢を変えずによく曲る。今どき内燃機関にもまだこだわりたい、自動車愛好家さんを虜にする貴重で大きな存在。ALPINAはBMWにブランドを譲渡し2025年で生産を終えると発表しており、購入可能な(羨ましい!)方は後悔なきよう。 ◆キャデラック・エスカレード「乗り心地がしなやかでとても良いのにワインディングでは想像を超え、よく曲る」 北米の都会的なイメージを味わうことの出来るキャデラック。その中でも迫力あるフロント・フェイスも含め、「デカい」エスカレードのボディ寸法は全長5400mm、全幅2065mm、全高1930mm。この巨体がネガに感じるのは狭い場所やETCゲートくらいで、室内空間や快適性、そして走行性能からもキャデラックのフルサイズ&フラッグシップSUVならではの艶やかで深みのある質感を五感で楽しむことができる。 業界初という38インチの湾曲型高精彩ディスプレイ、AKG社製36個のスピーカーシステムを搭載するオーディオの音質の素晴らしさに加え対話補助機能も搭載し3列目でも控えめの声量で車内会話は可能。 6.2リッター V8エンジンと10段ATの組み合わせにより、途切れずトルクを引き出すことができ、ちょっと乾いたハスキーなサウンドもたまらない。4WD、マグネティック・ライド・コントロールやエスカレードのために新開発された独立式リア・サスペンションのおかげか、乗り心地がしなやかでとても良いのにワインディングでは想像を超え、よく曲る。 ◆ジャガーIペイスRダイナミックHSE「下手なスポーツカーも真っ青」 歴史ある自動車メーカーとしてBEVのIペイスをいち早く市場投入(2018年)したジャガー。空力性能を追求した軽量&高剛性ボディ、見た目は流麗とはいえ大型のSUVという想像を裏切るハンドリング、BEVらしいクリアな加速とレスポンス、加速とシンクロして聞こえるアクティブ・サウンド・デザインの感性と官能品質の追求ぶり、そして最大696Nmの大トルクなどなど……少しオーバーに言えば、スポーツカーのFタイプが脳裏に浮かんだ。 走行中はすっと格納されるドア・ハンドルや、独創的なインフォテインメント・システム、OTAといった要素も、ジャガーが新たなステージへと進んだと深く印象づけるものだった。 そんなIペイスが2023年秋にマイナーチェンジを実施。以前はエンジン車風だったグリルをシールド・タイプとし、よりわかりやすいエレクトリックなスポーティ・モデルへと生まれ変わった。同乗されたEPC会員の方ともその下手なスポーツカーも真っ青の身のこなしを共有。楽しかったです。 ◆ミニ・ジョン・クーパー・ワークス「コーナリングの楽しさがドライバーのビッグな活力になる逸材キャラ」 もしもミニが路上から1台も居なくなったら、街並みが味気ないものになってしまうと思う。実は私、路上を走るミニを見かけるだけで元気をいただいている。たぶん目の肥えた大人がオシャレをしても普段着でもミニを楽しみたいと思うのは、その随所からセンスと品質と確かな性能を感じられるから。 乗ってみても、最初にニンマリするポイントが運転席からの視界。ダッシュボード上の峰の造形も秀逸で視界の抜けが良く、前と左右ガラスが上下幅均一な、独特の視界と空間演出(スイッチ類含む)はほかでは味わえない。最新のメーター・ディスプレイやコネクティビティ、ADAS装備も抜かりない。 JCWは2021年の改良でグリルがより大型になり、丸目ライトの目ヂカラと相まってよりダークでワイルドさがアップ。2りリッターエンジン+8段ATは強靭なサス&タイヤとともにエネルギッシュで骨太感のあるドライブ・フィールを生んでいる。見るだけで楽しく、交差点を曲るだけで楽しいミニだけど、JCWは速度に係わらずコーナリングの楽しさがドライバーのビッグな活力になる逸材キャラです。 ◆フォルクスワーゲンID.4ライト「実用車としてのこだわりが凄い」 2022年11月に日本導入されたVW ID.4。私はこのID.4を初試乗したときから、VWの国民車構想(1934年)にも通ずる"実用車"へのこだわりが感じられ、かつての初代ビートルとは色々違うけれど、ID.4のVWらしさにホッコリしたのだった。 床下にバッテリーを敷く後輪駆動のID.4は大型SUV並みの広い室内空間が得られ、比較的小回りも得意。またハンドリングも前輪駆動のゴルフのスムーズさとも異なり、BEV+後輪駆動のID.4は加速性能に優れ、フロントが軽く低重心でフラット。ライン・トレースが楽で、スイスイ、キビキビぶりは運転のし易さに繋がる。 ダッシュボードの実際の奥行きの物理的な長さをデザインで感じさせない(車輌感覚の善し悪しに響く)テクニックも実は素晴らしい。航続距離を618kmに延ばした上位グレードはプロ、普及グレードは435kmのライト。BEVの価格は割高な印象があるし他ブランドにはより廉価なモデルもあるけれど、ライトはゴルフGTIとほぼ同価格(514万円)。充電&走行実用性が合えばVWのBEVという選択肢もアリ。 文=飯田裕子 (ENGINE 2024年4月号)
ENGINE編集部
【関連記事】
- 「執念で開発したロータス最後の内燃エンジン・スポーツカー!」by 清水和夫 これがエミーラV6ファースト・エディションに試乗したモータージャーナリスト3人のホンネだ!
- 「あろうことかスーパーチャージャー付き5リッターV8を搭載してるんだから恐れ入る」by 国沢光宏 これがランドローバー・ディフェンダー110 V8に試乗した自動車評論家3人のホンネだ!!
- 「今を逃したら、もう買えない!」by 小沢コージ 残るは在庫限りか!? これが3代目、ミニ・ジョン・クーパー・ワークスに試乗したモータージャーナリスト3人のホンネだ!!
- 水没ポルシェに涙! 自動車ジャーナリスト飯田裕子さんが愛車を守りきれなかった衝撃の事件とは
- 私の人生を変えたクルマ! 自動車ジャーナリストの飯田裕子さんの衝撃的な体験とは