山上直子の犬も歩けば 秋の京に競う しなやか竹の美と生命力 ダニエル・オスト展「竹と花の奏宴」
秋の京都に華麗な花のアートがやってくる。世界的なフラワーアーティスト、ダニエル・オストさんが25日から、京都市北区のしょうざんリゾート京都で「竹と花の奏宴」展を開催。東西文化の融合をテーマに、世界遺産をはじめ、さまざまな場所で作品を発表してきたオストさん。今回は洛北の奥座敷、通常非公開の迎賓館「峰玉亭」を舞台に選んだ。竹の花器など日本の伝統工芸との調和が見どころで、深まる秋の風情とともに、優雅な花の造形美が堪能できそうだ。 【写真】日本庭園にたたずむ数寄屋建築「峰玉亭」 ようやく木々が色づき始めた洛北へ―。制作中のオストさんを訪ねた。 華麗で上品な作風は日本にもファンが多い。京都でもこれまで金閣寺や東寺、重要文化財の京町家・杉本家住宅など、さまざまな場所で作品を紹介してきた。 今回は、風雅なリゾート地の日本庭園にたたずむ数寄屋建築「峰玉亭」。戦後に一世を風靡(ふうび)した着物ブランド「しょうざん」の創設者、松山政雄が建てた迎賓館である。一帯は知る人ぞ知る京の奥座敷だ。 その出合いについてオストさんは、「初めて訪れたのはまだコロナ禍のころでしたが、とても神聖な力を感じて衝撃を受けました」と振り返る。 自身、何百回と日本を訪れ、日本文化に親しんできた。そんな経験の中でも、美しい緑のコケに覆われ、北山杉がそそりたつ幽玄の庭は特別だったようだ。 「こんなに美しい日本庭園を見たのは初めて。また建物に見られる職人の技術の高さ、考え尽くされた日本のクラフトマンシップに感動したことも含めて驚きでした」と打ち明ける。 さて、今回テーマに掲げたのは「竹」。峰玉亭には多種の竹で組まれた天井など竹の美があちこちに配され、触発された。オストさんにとっても竹は欠かせない花材の一つ。その魅力についてこんなふうに説明してくれた。 「例えばカシの木は強い風に立ち向かい、時にその枝や幹すら失うこともあります。一方で、竹は風が吹いてもしなやかに身を伏せてまた立ち上がる。そんなところに生命力を感じるのです」 展覧会では自身がデザインし竹細工の人間国宝、藤塚松星さんらに制作を依頼したものも含めて多彩な竹製の花器がズラリ。約50種におよぶ花々を使って作品を仕上げる予定だ。