怖さと紙一重の大技 白井の「ソラグラインド」―スケートボード・アーバンスポーツ五輪予選
スケートボードはメダルラッシュに沸いた2021年東京五輪に続き、パリでも日本勢の活躍が期待される。 【ひと目でわかる】白井空良「ソラグラインド」 メダルの筆頭候補に挙がるのは、男子ストリートで昨年12月の世界選手権を制し、五輪出場権を争うランキングで1位の白井空良(22)=ムラサキスポーツ。独創性に富んだトリック(技)を持っている。 白井の代名詞ともいえるのが、自身の名を冠した「ソラグラインド」。正式名称は「フロントサイド180スイッチノーズグラインド」。東京五輪よりも前に、世界最高峰プロツアーのストリートリーグ(SLS)で初披露して周囲が名付けてくれた。スケーターを象徴する「シグネチャー・トリック」で、技に自分の名前が入ることはスケーターにとって栄誉と言える。この技の極意を本人に解説してもらった。 ◇見えづらいレールに まず右足前のグーフィー・スタンスで助走。視界の左側にあるレールに向かって、後ろの左足を踏み込んで体とデッキ(板)を同時に跳ね上げる「オーリー」で跳び上がる。この後が「すごく難しい」。板に両足が吸い付いた状態で体ごと時計回りに180度回転する際、レールが背中側に来るため見えづらくなる。 それでも板を1回転させれば本来の右足前でレールに乗って降りられるが、この技は半回転のため左足前にスイッチ。そこから前輪同士をつなぐトラック(金属部分)をレールに引っ掛けて、後輪を浮かせて着地する。 空中で回りながら背を向けたレールに本来と逆のスタンスで乗り、板の前面だけで降りる大技。「(逆のスタンスは)怖いし成功率は下がる。だから他の人はやらないと思う」。裏を返せば、それだけ高得点を見込める自分だけの強みになる。 バランス感覚や着地の精度は、数え切れないほどの練習で養われたと胸を張る。世界選手権決勝の一発技「ベストトリック」では、滑り降りた後も180度回って着地するアレンジを加え、ライバルたちを驚かせた。 予選敗退に終わった東京五輪から3年。パリ切符を争う五輪予選シリーズを勝ち抜けたら、その先にどんなものを見せるのか。「自分の技を披露できれば、絶対に結果はついてくる」。金髪の若者の心は燃えている。 ◇白井空良の略歴 白井 空良(しらい・そら)幼少期からスケートボードに親しみ、19年のXゲームズ・ミネアポリス大会で3位。21年東京五輪代表。23年12月の世界選手権で優勝し、現在はパリ五輪出場権を争うランキング1位。派手な髪色がトレードマーク。22歳。神奈川県出身。