3COINSが大型店で攻勢、全国で人気が広がる理由、「カワイイ」から実用性を追求した開発に転換
着実に規模拡大を進めてきたスリーコインズだが、順風満帆だったわけではない。2018年頃には売上高が伸び悩み、出店も進まない曲がり角を迎えていた。 そこで2019年頃にかけ、商品開発から店舗での見せ方まで大幅に見直し、リブランディングを図ることになった。「かわいいといった感性を軸に訴えるより、商品の機能や実用性を打ち出して勝負しようと決めた」(澤井部長)。 以前は流行に沿った柄や色の雑貨を中心に展開するなど、20代前半の女性を想定した商品作りだった。しかし、自社アプリを通して顧客の属性データを集めると、主に30~40代女性に支持されていることがわかった。購入してよかった商品をSNSで投稿してくれる、拡散力の強い層だという。
そこで、家事や育児に活用できるキッチン用品やキッズ関連の商品群を重点的に強化、商品はベージュやクリーム色のデザインに統一した。 シンプルな商品に合わせて、店舗も模様替えをしている。従来のライムグリーン、白、ピンクのポップなイメージから、壁の色は抹茶、床はコンクリートの色に近いグレーに変えた。什器も木製のものに切り替えるなど、落ち着いたトーンにしている。 ■中核事業に成長、円安を克服できる? リブランディング以降は勢いを取り戻し、スリーコインズはプラスを中心に出店を進めてきた。
店舗数は2019年度の199店から2023年度に306店まで拡大。スリーコインズが中心の雑貨事業の売上高は2019年度の349億円から、2023年度には725億円まで拡大した。パルグループ全体の売上高の4割弱を占める中核事業になっている。 一方で、目下の課題は利益率の底上げだ。雑貨事業の部門利益は2019年度の23.2億円から、2021年度に41.7億円と伸ばしたが、昨今の円安の影響で、2023年度は19.8億円と半減してしまった。
現在は7~8割の商品を中国、それ以外は東南アジアや韓国で生産し、輸入している。急激な円安の影響は厳しく仕入れ値が上昇、原材料の高騰も重なり、業績を圧迫している。 ■アパレル企業の強みを生かせるか スリーコインズは300円の商品が約6割で、300円以上の高単価商品が約4割を占める。そのため、円安を理由に商品の機能性や品質を落として販売する方針ではない。今年4月には既存商品の値上げと内容量の変更を実施。商品をアップグレードしつつ、価格を見直す構えだ。
調達面の見直しも必要になる。すでに一部の商品を商社経由でなく上海子会社から仕入れるルートに切り替えた。生産国の見直しも検討し、今後は東南アジアの生産拡大やインドでの生産も視野に入れる。こうした取り組みで、雑貨事業の利益率は2023年度の2.7%から、2021年度の6.7%程度に戻していく方針だ。 スリーコインズは1994年に大阪の茶屋町で1号店を開店している。意外にも30周年を迎える長寿の業態なのだ。円安の逆境の中でも、アパレル企業発の独自性やノウハウを生かし、顧客を魅了する商品を作り続けることが、今後のポイントとなりそうだ。
井上 沙耶 :東洋経済 記者