煮干し原料高騰…ラーメンのだし、ワニエソ使えそう 鶴岡で試食会
スルメイカやハタハタなど本県主力魚種の不漁が続く中、庄内地方のラーメンに使う煮干しだしの原料カタクチイワシも価格が高騰し、飲食店を悩ませている。代用品として県水産研究所(鶴岡市)などが本格流通を目指すのは、庄内沖で近年取れるようになった未利用魚のワニエソ。漁師や飲食店関係者を招き、ワニエソだしの試食会を開くなど活用に向けた取り組みが進む。 同市羽黒町のラーメン店「中華そば琴(こん)の」の今野直樹代表(47)によると、スープだしに使用するカタクチイワシの仕入れ値は、2015年の創業当時に比べ3~4倍に上がっている。あごだしの原料トビウオも不漁により手に入りづらくなり、価格転嫁せざるを得ない状況に「焦りがあった」と語る。 今野代表は、市内で食文化の普及に取り組むフードプロデューサー小野愛美(まなみ)さん(45)に相談。小野さんは「未利用魚で新たなだしが取れ、付加価値が上がれば漁師も飲食店も利点がある」と考え、新潟県で既に研究が進むワニエソに活路を見いだした。研究所に依頼し、本年度から研究がスタートした。
研究所は、ワニエソの焼き干しからだしを取り、カタクチイワシの煮干しやトビウオの焼き干し、かつお節と比較して成分・味を分析。その結果、ワニエソは他のだしに比べ甘みとうまみが強く、苦みと酸味、コクが弱いことが分かった。 試食会は10日に開かれ、漁師や飲食店経営者、水産物加工業者など約20人が参加。ワニエソから取っただしを味わい、「くせやえぐみがない」「何の料理にも合わせやすそう」といった声のほか、「(味が淡泊なので)内臓を含めてだしを取ったり、他のだしと合わせたりしてはどうか」などの意見が上がった。 一方で、不安は原料の確保だ。ワニエソの水揚げ量は日によって差があり、コストを抑えた保存方法も課題となる。 中華そば琴のは今後、ワニエソだしを使ったラーメンの試食会を開き、関係者の意見を募る予定という。今野代表は「組み合わせ次第では、相乗効果でよりおいしいだしが生まれる可能性もある」、研究所の五十嵐悠研究員は「利活用が実現し、漁業者の新たな収入源になればいい」とそれぞれ期待を寄せている。
【ワニエソ】相模灘―九州南岸の太平洋沿岸、若狭湾―九州南岸の日本海・東シナ海沿岸などに生息する魚。西日本ではかまぼこなどとして食されている。庄内浜でも5~6年前から多く水揚げされるようになったが、小骨が多く、本県で食べる文化がないことなどから、これまでほとんどが廃棄されていた。