藤井聡太叡王が伊藤匠七段に屈して“全冠254日天下”…「時間の問題と思っていた。気にせずに」
将棋・第9期叡王戦五番勝負第5局が20日、山梨県甲府市の「常磐ホテル」で指され、藤井聡太叡王=竜王、名人、王位、王座、棋王、王将、棋聖と合わせて八冠=は後手番の挑戦者・伊藤匠七段に156手で敗れ、シリーズを「〇●●〇●」の2勝3敗で落とし、七冠に転落した。 これまで無双状態だったタイトル連続獲得記録は22期でストップ。全冠制覇は254日天下(奪取日と陥落日含む)だった。 開幕白星から伊藤にタイトル戦では初となる2連敗を喫し、土俵際に追いやられた八冠王。負ければ七冠への後退は第4局(先月31日)と変わらない状況で、連勝による逆転を期したが、同い年の伊藤の意地に屈した。 振り駒の結果、先手は先手は藤井に。これまでの4局と同様に角換わりで進行。「途中、いろいろな変化があったと思うんですが、本譜は予定通りの指し方。攻めは細いですが、玉の遠さを生かせればと思った」と、自玉を9九に隠居させた展開を語った。 藤井は時間に苦労する伊藤の玉の周辺を積極的に崩し、時は優位に立ったが反撃をくらった。「途中まで、こちらが攻めていく展開だったが、伊藤さんの手順に気付いてなくて、苦しい感じになってしまったかな」。先に1分将棋に入り、評価値は99対1になるなど絶体絶命。同じく秒読みに入った伊藤を相手に粘りを見せたが「負けました」と頭を下げた。 一方で、終局直後は伊藤と話して、うつむいて笑顔を見せる場面も。シリーズを振り返り「終盤でミスが出ることが多く、結果はやむを得ない。伊藤さんの力を感じるところも多かった。終盤の精度が低かった」。叡王戦はリアルに時間が減るチェスクロック方式で「課題だった」とした。 七冠転落は「時間の問題と思っていたので、気にせずに頑張りたい。(八冠復帰は)今はまったく考えていない。実力を付けることが一番大事」と話した。 七冠になっても、まだまだ試練は続く。7月1日に第3局(VS=愛知県名古屋市「亀岳林 万松寺」)が待つ棋聖戦五番勝負は、山崎隆之八段に2連勝中だが、気落ちしては臨めない。同6、7日には渡辺明九段を迎え撃つ王位戦七番勝負第1局(名古屋市「徳川園」)も待つ。来年は叡王戦リベンジも期す。藤井伝説の新章が始まった。
報知新聞社