F1分析|あぁ、F1のタイヤ選択は実に難しい……ハードタイヤでのスタートが軒並み大正解だった怪
トップグループでも傾向は同じ! F1のタイヤ選択は難しい……
この傾向は、トップグループでも見て取れる。 こちらのグラフは、トップグループのレースペース推移。ラッセル以外の4台は、ミディアム→ハードという戦略。ラッセルのみが前述の通りハード→ミディアムだ。 上位4台がミディアムタイヤを履いていた時のレースペースの推移もほぼ横ばい。つまりデグラデーションの進行と燃料搭載量の減少のレベルが相殺されていたわけだ。一方で当時ハードタイヤを履いていたラッセルのペースはうなぎ上りである。逆に上位4台がハードタイヤを履いた時には、彼らのペースが右肩上がりになったものの、レースの最後までタイヤがもたないことを念頭に置き、慎重なペースコントロールを強いられたため、ラッセルほどの上がり幅ではなかったと思われる。 これらを考えると、燃料を多く搭載している時、つまりレース序盤にハードタイヤを履くのが、いずれのマシンにとっても大きなメリットになった。逆を言えば、本来のパフォーマンス差が少ないマシン同士が対峙するということになれば、ハード→ミディアムと繋がなければ、ほぼ勝ち目はなかったとも言えそうだ。 ただハードタイヤをスタートに使うのは、非常に大きなリスクが伴う。スタートでの蹴り出しはミディアムに比べれば当然悪く、ポジションを落としてしまう懸念があるからだ。 今回ハードタイヤでスタートしたドライバーは、いずれもグリッド下位に沈んだドライバーたち。つまり予選での失敗やペナルティを受けたことにより、ハードタイヤでスタートするというギャンブルを打つことができ、それが結果的に成功に繋がったのだ。 なおピレリは土曜日が終わった時点で、1ストップで決勝レース走り切るのは不可能だと断言していた。しかし終わってみればほとんどのマシンが1ストップ……ピレリですら、タイヤの挙動を読み切ることができなかったわけだ。 F1のタイヤ選択とは、実に難しい……それを露わにしたアメリカGPだったと言えよう。
田中 健一