自転車で走行中、信号は歩行者用と車両用どちらに従う? ~弁護士に訊いてみた~【クルマと法律vol.11】
自転車で車道を通行するときの信号は?
相談者:ちなみに、車道の左側端を通行していた自転車が交差点を通過するときは、「車両用信号」に従えばいいのですか? 芳仲弁護士:はい、その通りです。 相談者:そうすると、自転車の交通ルールは、以下のような整理で間違いないでしょうか。 【自転車に乗車中の交通ルール】 (1)自転車は、車道の左側端を走行するのが原則である。 (2)車道の左側端を走行してきた自転車は、交差点では、いたずらに進路変更することなく、「車両用信号」に従って交差点内を直進走行する。 (3)歩道通行を許された自転車が歩道を走行してきたときは、横断歩道を通行するのがよい。 (4)横断歩道を通行する自転車は、「歩行者用信号」に従う。 芳仲弁護士:そのとおりですね。なお、例外的に許されて歩道を通行している自転車が、充分に安全を確認したうえで車道左側端に出て、「車両用信号」に従って交差点内の車道を走行することは、それだけで直ちに違法とは断言できません。 しかし、例えば、進行方向の「歩行者用信号」が青色点滅を開始したとき、「車両用信号」がまだ青色灯火であるのを発見。早く交差点を通過するために「車両用信号」に従おうとして、急いで車道に飛び出すといったような運転は極めて危険です。そのような場合、安全運転義務違反(道交法70条)のほか、具体的事情次第でそれ以外にもさまざまな交通法規に違反する可能性が高いのでしないようにしましょう。 相談者:わかりました。いかにも交通事故の原因となりそうな危険な走行ですね。絶対にしないようにします。
青色矢羽根や自転車マークはどんな意味?
質問者:ところで、先ほど話に出た、「青色矢羽根」のペイントや自転車のピクトグラムは、道交法上の道路標示としての意味はあるのですか? 芳仲弁護士:道路標識等の種類、様式、設置場所、その他道路標識等について必要な事項は「道路標識、区画線及び道路標示に関する命令(昭和35年総理府・建設省令。以下「道路標識令」)」という内閣府令・国土交通省令で定められています(道交法4条5項)。 自転車専用レーンとして、車道の左側端付近の路面に青い帯のうえに「自転車専用通行帯」という文字がペイントされているケースは、道路標識令に定めがあります。さらに、道交法上も、公安委員会が道路標識によって指定した車両通行帯(道交法20条2項)と位置づけられているため、自転車以外の車両の走行はできません。よって、実際に取り締まるかどうかは別として、自転車以外の車両が走行した場合、道交法上の「通行区分違反」の対象になりえます。時間帯によって設けられる「バス専用レーン」では、実際に取り締まりがされています。 質問者:自転車専用であると法律で定められているレーンもあるのですね! 芳仲弁護士:はい。他方、「青色矢羽根」のように、道路標識令に規定されていない単なる「路面表示」でしかないものもあります。このようないわゆる「法定外表示」は道交法上の「道路標示」にはあたりません。そのため、例えば、青色矢羽根の上を自転車以外の車両が走行しても、通行区分違反にはなりません。 しかし、青色矢羽根は、道交法上のルールに沿って、自転車が走行すべき正しい位置と方向を明示するものです。矢羽根の形状から逆走を抑制できたり、周囲の車両から幅寄せされにくくしたりといったメリットも多いものです。 質問者:確かに、青色矢羽根があったほうが自転車で車道を走りやすいと感じますね。 芳仲弁護士:ちなみに、道交法上の取締対象か否かとは別に、例えば、交通事故が起きたときに民事上の「損害賠償請求額」を決定するにあたって、相互の過失割合を判断する上では、法律(道交法)上の義務違反の有無や程度だけではなく、実際の交通ルールとしての「法定外表示」を遵守していたか否かも、無影響とはいえないでしょう。 質問者:「法定外表示」とはいえ、守らないのはおかしいですよね。 芳仲弁護士:そうですね。自転車は車道通行が原則ですが、特に大都市では、幼児や高齢者に限らず「自転車通行可」とされている「歩道」が多いのが実情です。しかし、自転車に乗って「歩道」を通行する以上は、歩行者の安全に充分に配慮しましょう。さらに、「横断歩道」を通行する場合も「歩行者用信号」に従って、安全な通行を心掛けねばなりません。また、「自動車」と混在しながら「車道」を走行する場合には、「車両用信号」に従い、周囲の交通状況にも充分に配慮して安全運転を心掛けることが重要です。 質問者:はい。充分に気をつけて運転しようと思います! ありがとうございました。 ――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― (公財)日弁連交通事故相談センターでは、電話による交通事故無料法律相談を実施しています。 TEL:0120-078325 平日10:00~16:30(第5週を除く水曜は19:00まで延長) https://n-tacc.or.jp ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
文=弁護士・芳仲美恵子