これが16歳の子供にすることか…激しい拷問受けたシリア男性、トルコ国境で語る期待と不安「希望持ち続けたい」
アレッポの状況が落ち着いたら家族を呼び戻し、レバノンに避難した恋人にプロポーズする予定だ。「あらゆることが不確かなままだけど、希望は持ち続けたい」と気丈に話した。
1日最大1000人
トルコはシリア難民の出国手続きを迅速化している。英BBCは13日、検問所の人員や施設が増え、1日あたり2万人が通過可能になったと報じた。ただ、通過しているのは1日最大1000人程度で「大規模な帰還には至っていない」(トルコの地元当局関係者)のが実情だ。
シリアの治安や経済の先行きに不安があり、多くの難民が帰国に慎重な姿勢を崩していない。一度トルコを出ると一時保護の資格を失い、当局の意向次第で入国できなくなる可能性があるため、帰国のハードルが上がっているようだ。
トルコ南部アンタキヤの建設会社に勤めるシリア中部ハマ出身のジェイラル・ヤシンさん(27)は、イスタンブールにいる家族と話し合い、トルコに残ることにした。アサド政権時代に約50人いた親戚の半数が殺害され、「まだ怖い。公正な社会が作られるまで帰れない」と打ち明けた。
南部アルトゥノジュでパン店を営むハマ出身のナデル・アルシクさん(35)も帰国は「時期尚早」と判断した。昨年2月のトルコ・シリア地震で被災し、今はコンテナ住宅暮らしだが、「安定した生活を簡単に手放せない」と話す。
UNHCRは17日、シリアで旧反体制派が11月27日に反攻を始めてから国内で新たに100万人以上が家を追われたと発表した。一方、トルコやレバノンなどに逃れていた難民らの帰国は数千人にとどまる。
トルコは帰国促す
アサド政権と対立していたトルコは難民を積極的に受け入れてきた。しかし、18年に急激な通貨リラ安などで経済が低迷すると、シリア難民は安価な労働力として雇用を奪うなどとして風当たりが強まった。エルドアン政権には、難民の帰国を促すことで国民の批判をかわす狙いがある。
トルコで繊維業や建設業などに従事するシリア人は50万~100万人に上るとされる。帰還が本格化すれば労働力不足や労賃の上昇からインフレ(物価上昇)を招くとの見方もある。エコノミストのタイラン・ビュクシャヒン氏は「多数のシリア難民が帰国すれば、トルコ経済に負の影響が出る」と指摘した。