これが16歳の子供にすることか…激しい拷問受けたシリア男性、トルコ国境で語る期待と不安「希望持ち続けたい」
勢力乱立、治安・経済安定せず
アサド政権崩壊を機に、国外に逃れていたシリア難民が帰郷し始めた。隣国トルコの難民は家族で安心して暮らせるか見極めようと、第1陣として若い男性だけが帰国するケースが多い。シリアは様々な勢力の支配地域が広がり、安定した統治が課題だ。多くの難民はトルコに当面とどまるとみられる。(トルコ南部ジルベゴズ 西田道成) 【写真特集】中東紛争、食糧難に苦しむ子どもたち
「早く故郷見せたい」
トルコ南部ハタイ県のジルベゴズ検問所には13日、スーツケースや家財を運ぶシリア人が出国手続きの列に次々と加わった。支援団体が提供する紅茶やスープを受け取ると笑みを浮かべ、新生シリアへの期待に胸を膨らませた。
父子2代にわたり独裁を続けたアサド政権への不満から、シリアでは2011年に反体制運動が広がり、内戦に発展した。政権は大量殺害や拷問、処刑で弾圧した。国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)のまとめでは、内戦の長期化で外国に逃れたシリア難民は12日現在、約481万人に上り、トルコには6割の約293万人が暮らす。
支援団体などによると、難民は検問所で手続きを終えた後、緩衝地帯に入り、シリアの暫定政権を主導する旧反体制派「シャーム解放機構」が用意した車に分乗して目的地に向かう。
13年前に北部アレッポから逃れてきたムサさん(34)は家族6人で帰国すると決めた。「きっとこれから良くなる。トルコ生まれの子供たちに早く故郷を見せたい」と声を弾ませた。ただ、弾圧の時代を知るだけに「今後も何が起こるか分からない」と警戒している。
オマルさんは16歳の時、父が反体制的だとみなされ、ともにアサド政権の治安当局に連行された。待っていたのは、激しい拷問だった。肺を痛め、手術を受けた。今も片頭痛の後遺症が残り、痛み止めの薬が手放せない。上着を脱いで右わきの大きな縫合痕を指すと、「これが16歳の子供にすることか」と涙を浮かべた。