<傷物語>映像表現に秘められた思い 美意識の源泉 尾石達也監督に聞く
尾石監督は「決定版を作る」という思いで、完成度の高い総集編を目指し、編集作業に挑んだ。編集にあたり、声優陣が改めて収録したシーンも多いという。中でも大きく刷新されたのは音響で、「劇伴はコミカルな曲をなくして、シリアスなものに統一した」と魅力を語る。
◇「化物語」の挑戦 ボーイミーツガールの爽やかな読後感を表現
新たな装いでよみがえることになった「傷物語」。劇場版3部作の制作当時、石川プロデューサーは、アシスタントプロデューサーとして作品に携わっていた。石川プロデューサーは、2009年に「化物語」が放送された当時は、一ファンとして作品を楽しんでいたという。
「僕がアニメのブルーレイディスクを初めて買ったのが『化物語』なんです。西尾さんの小説との出会いも、アニメの『化物語』がきっかけですし、僕がアニメ業界に入ろうと思ったきっかけの作品の一つでもある。そこからアニプレックスに入社して、最初は『魔法少女まどか☆マギカ』でシャフトさんとご一緒することになりました。その流れで『傷物語』で尾石さんとご一緒することになった。『化物語』のブルーレイを買っている時には、自分がそんなことになるなんて全く思っていなかったですね(笑い)」
石川プロデューサーがそうであったように「化物語」が放送された当時は、多くのアニメファンがその独特の映像表現に度肝を抜かれた。「化物語」は「西尾維新アニメプロジェクト」の第1弾として企画され、「さよなら絶望先生」「まりあ†ほりっく」といったシャフト作品に参加してきた尾石監督が初めてシリーズディレクターを務めることになった。尾石監督は西尾さんの原作に触れ、「挑戦しがいがある」と感じたという。
「初めて原作小説を読んだ時は、びっくりしました。マシンガンのように会話が続いて、これを一体どうやって映像化すればいいのか?と。それまで自分はマンガ原作のものしかやっていなかったものですから、小説でかつ会話劇がひたすら続く『化物語』は挑戦しがいがあるなと思いました」