「カープは変わらなければ」打撃強化へ競争促す…新井監督勝負の3年目へ
「第1巡選択希望選手、広島東洋、佐々木泰」――。都内のホテル会場にアナウンスが響くと、ファンから大きな歓声と拍手がわいた。 【表】10月のドラフト会議でカープが指名した選手 10月24日に開かれたプロ野球のドラフト(新人選手選択)会議。広島東洋カープは広島県三次市出身の宗山塁選手(21)(明治大)の1位指名を、12球団で唯一、事前に公表した。2019年以降、投手の1位指名が続いており、投打のバランスを踏まえると、即戦力野手の獲得は必須となっていた。
当日はカープを含めた5球団が宗山選手を指名。抽選の結果、新井貴浩監督(47)の直前にくじを引いた東北楽天ゴールデンイーグルスが交渉権を得た。それでもカープは方針を崩さず、「走攻守三拍子そろっている」(新井監督)という青山学院大の佐々木泰選手(21)を代わりの1位に選んだ。 佐々木選手はアマチュア球界屈指の強打者だ。岐阜県出身で、主将として臨んだ今年6月の全日本大学野球選手権では、準決勝で4安打6打点を記録するなどし連覇に貢献。最高殊勲選手にも輝いた。守備位置は三塁で、担当の高山健一スカウトは「チームを引っ張る力がある」と将来の中心選手として期待を寄せる。4位指名の富士大、渡辺悠斗選手(22)も長打力が魅力の右打ちの内野手だ。 チーム総得点数がリーグ5位の415と貧打に泣いた今季のカープ。その中で秋山翔吾(36)、小園海斗(24)両選手らは気を吐いたが、いずれも左打者だった。打線に厚みをつけるため、強打の右打者はかねての補強ポイント。佐々木選手とポジションが重なる小園選手は「(新人は)関係ない。やるべきことをやるだけ」と平静を装うが、新井監督は「新しい競争が始まる」と強調した。
もちろん来季に向けたチーム強化は新人だけではない。 これまで外国人選手獲得は球団が主導してきたが、現在は新井監督自ら、獲得候補のリストに目を通し、選定作業を進めている。ドミニカ共和国のカープアカデミー出身で、今春に育成選手契約を結んだモイセス・ラミレス(22)、ネルソン・ロベルト(24)の両選手も支配下契約を目指し、秋季練習で連日、快音を響かせてきた。 4日には宮崎県日南市で秋季キャンプがスタートし、若手選手らが精力的にバットを振り込んだ。今季、伸び悩んだ末包昇大選手(28)や林晃汰選手(23)らの奮起も待たれる。「打線の軸を担うホームラン打者になる」と末包選手は誓う。 新井監督は言う。「カープは変わらなければならない。痛みも生じるが、覚悟と信念を持って強いチームを作っていく」。勝負の3年目に向けた戦いは始まっている。(新田修)