ノーベル平和賞に日本被団協 被爆者の全国組織
ことしのノーベル平和賞に被爆者の全国組織、日本被団協が決まった。ノルウェーのノーベル賞委員会が11日、発表した。米軍が広島、長崎へ原爆を投下してから79年。非人道的な被害を世界へ告発し、「ふたたび被爆者をつくるな」と、核兵器廃絶を訴え続けてきた活動が評価された。 【写真】涙でくもったファインダー 原爆投下の8月6日とらえた5枚だけの写真 ウクライナに侵攻したロシアが「核の脅し」を繰り返し、イスラエルがパレスチナ自治区ガザで戦闘を続ける中、核戦争の回避と核兵器廃絶、世界平和の実現を国際社会に迫る受賞となる。 日本被団協は、1956年8月10日に広島、長崎の被爆者たちが結成した。現在は各都道府県の組織で構成し、広島からは広島県被団協(箕牧(みまき)智之理事長)が加盟。もう一つの県被団協(佐久間邦彦理事長)もオブザーバー参加している。原爆被害に対する国の償いを要求する一方、核軍縮を話し合う国際会議に代表団を送るなど国内外で核兵器廃絶へ向け運動してきた。 2016年4月からは、核兵器を禁止し、廃絶する条約の締結を全ての国に迫る「ヒバクシャ国際署名」を国内外の平和団体と展開。約1370万筆を集めた。17年7月に122カ国・地域の賛同を得て国連で採択された核兵器禁止条約は前文で被爆者に触れ、核兵器の使用、使用するとの威嚇、保有などを全面的に違法化。21年1月22日に発効した。 禁止条約を巡っては、核兵器保有国が反発し、日本など米国の「核の傘」に依存する非保有国も後ろ向きだが、日本被団協の受賞で批准に向けた国際世論が高まるのは必至だ。また、核兵器使用を示唆するロシアや、核抑止の強化へ傾く各国をけん制する意味合いも大きい。 日本のノーベル平和賞受賞者は、「非核政策の推進」などを理由とした74年の佐藤栄作元首相がいる。禁止条約の制定に貢献した非政府組織(NGO)「核兵器廃絶国際キャンペーン」(ICAN(アイキャン))が17年に受けた際は、授賞式でカナダ在住の広島の被爆者サーロー節子さん(92)がスピーチした。
中国新聞社