女川原発2号機差し止め訴訟、住民側の控訴棄却…仙台高裁
東北電力女川原子力発電所(宮城県女川町、石巻市)2号機を巡り、重大事故時の広域避難計画に実効性がないとして、原発30キロ圏内の石巻市民16人が東北電に対し、原発の運転差し止めを求めた訴訟の控訴審で、仙台高裁(倉沢守春裁判長)は27日、差し止めを認めず、住民側の控訴を棄却する判決を言い渡した。 【表】エネルギー基本計画の変遷
女川原発の避難計画は、県などが策定し、政府の原子力防災会議が2020年6月に了承。対象は石巻市など7市町19万人弱で、重大事故時の避難ルートや手段、避難先などが定められている。同訴訟ではこの避難計画の実効性が争点となっていた。
住民側は、避難計画について、被曝(ひばく)の有無の検査体制や避難用のバスの確保などの詳細が決まっていないと主張。住民が一斉に避難すると渋滞などで円滑に避難できず、「生命や身体が害される恐れがある」と主張してきた。
東北電は、「一斉避難を前提とする主張は誤りだ」と反論。事故後に各地の放射線量を測定して必要な地域から退避を順次行うため、円滑な避難は可能だとした。「原告は、原発事故発生の具体的な危険を立証していない」とも訴えていた。
1審の仙台地裁は2023年5月、原告側が避難理由となる重大事故発生の危険性を具体的に立証していないと指摘。計画の実効性については触れず、「運転差し止めを認めることはできない」と棄却していた。
女川原発は東日本大震災で全3基が停止した。2号機は今年5月に安全対策工事が完了し、先月29日に13年7か月ぶりに稼働した。機器の不具合で原子炉を停止したが、今月15日に発電を開始した。現在は来月に開始予定の営業運転に向けた検査が行われている。