松戸女児殺害から7年 亡き娘の思いかなえ、父母が開いたベトナム料理店が評判 「良い人生をもう一度」 #ニュースその後
フォーも人気で、だしのしっかり効いたスープにこだわりがある。事件を知る人も知らない人も、料理の味を求めて店を訪れており、ネットの口コミでも星4~5つの高評価が目立つ。 料理を作っているリンさんの母親、グエン・ティ・グエンさん(37)は「おいしいという評判が多くてとてもうれしい」と喜ぶ。より良い料理を作りたいと考え、最近、ベトナム人の男性シェフも雇い始めた。
「友人に料理を…」途絶えた夢
両親が店を開いたのは、まな娘の遺志を実現するため。料理好きだったリンさんは、グエンさんと一緒にフォーやバインミーを作り、「ベトナム料理を日本の友人に作ってあげたい」と夢を語っていた。 ところが、悲劇がリンさんを襲った。2017年3月24日、リンさんは当時通っていた小学校の元保護者会長、渋谷恭正受刑者(52)=無期懲役が確定=に登校中、わいせつ目的で連れ去られて殺害され、遺体は我孫子市の排水路脇に遺棄された。あまりにも理不尽な事件だった。
両親は21年3月に松戸市内にベトナム料理店をオープン。ただ、新型コロナウイルス禍で売り上げが伸びず、苦しい経営状況が続いた。「店はリンちゃんがやりたかったこと。閉めるのはつらい」。父親のレェ・アイン・ハオさん(41)が打開策を考えていたとき、18年ごろまで営業していた元旅館の売却物件を見つけ、購入を決めた。
東日本大震災や原発事故で、大切な人や普通の生活を奪われた福島の人たち。その境遇が、何も悪いことをしていないのにまな娘を奪われた自分と重なっていると感じ、この土地に親近感が湧いた。松戸の店は閉め、家族で生活の拠点を二本松市に。家族はすぐ地域になじんだ。リンさんの弟が通う小学校の食事会を店で開いたこともある。 使っていない部屋を活用して近く旅館も開業する予定で、現在改装を進めている。20部屋ある客室はもともとあった和室を生かしつつ、外国人も宿泊しやすいよう床をフローリングにしてベッドを設置。露天風呂もあり、安達太良山から湧き出る名湯を堪能できる。