冬ドラマ名作ベスト3。『不適切~』にも号泣したけど、最高に感動したNo.1は
逃れられない心情描写が、重たくも沁みる
「命」という難しいテーマに向き合う患者と患者の家族を、古田新太、泉ピン子、木野花、高橋惠子、きたろう、筒井真理子といった錚々(そうそう)たる俳優陣が演じ、作品の質を押し上げました。そして主演・岸井ゆきのが、療養病棟に勤めて2年となる看護師・辺見歩で患者を支え寄り添う姿を、受けの演技で繊細に表現。 なかでも特に印象的だったのは、第2話の高橋惠子です。肝臓がん末期の夫を、8年もの間自宅で介護してきた妻を演じていました。命令ばかりだった夫への複雑な感情を抱いたまま、夫はいよいよ苦しみが止まらず鎮静の薬を投与されることに。最後まで妻の名を叫び求める夫に、最期のケアをします。そして耳元でささやくのです。“衝撃のひと言”を。 それを耳にしてしまった岸井の表情も絶妙。「どう死ぬのか」、ひいては「どう生きるのか」という、逃れることのできない命題に向き合おうとする人たちの“心の変化”を丁寧に映し出した本作。沖田×華氏による原作は続いているので、ぜひドラマも続編を制作してほしいです。
君が心をくれたから
最後は、放送開始直後から物議を醸していた“月9”『君が心をくれたから』(フジテレビ系)。その理由は、永野芽郁演じるヒロイン・雨が、事故に遭ってしまった大好きな太陽(山田裕貴)のために“心=五感”を差し出すという過酷な設定でした。しかも、雨は虐待されていたり、いじめられていたり、太陽と出会うまで孤独な境遇にいます。 そんな重い内容に、SNSの反応を見ると初期の離脱者もちらほら。実は筆者自身も、第2話まで観て一度は離脱したひとりでした。だって、月曜日から苦しすぎるし、切なすぎるし、救いがないように感じてしまったから。でも冬クールの終盤に初回から一気に最終回まで走ったイマ。本作が冬クールのNo.1!「観てよかった」と声を大にして言いたいです。
永野×山田の名演で、心に残る傑作に
はじめはあまりに負の衝撃が強かったけれど、誰もがもっている“奇跡”を丁寧に描いた作品でした。味覚を失い、嗅覚を失い、触覚を失い、最後には視覚も聴覚も失う――当たり前に他者と繋がり、自分がそこに存在することを教えてくれる“心(五感)”の大切さを、全11話を通して伝えてくれました。 何より、雨と太陽を演じた永野と山田の演技が秀逸。永野は、雨をただ不幸で可哀想なヒロインにせず、困難を乗り越える強さと美しさを体現しました。一方山田も太陽を、ただの明るい青年ではなく、逆境に立ち向かうまっすぐさと人を信じて寄り添う純粋さで、深みのある人物像に仕上げています。だからこそ、雨と太陽が織りなす物語は、実に美しかった。 ふたりの結末についてここでは触れませんが、「互いの存在を認め、必要とし、愛し愛されること」。それがどれほどの“奇跡”なのかを、ドラマを通して伝えてくれた珠玉のラブストーリーでした。未視聴の方や離脱した方には、ぜひ全話を通して観て欲しい作品です。 ======= 4月からの春クールに放送されるドラマも続々と発表されていますが、それまでに今一度、この冬クールのお気に入り作品を見返してみてはいかがでしょうか。 <文/鈴木まこと(tricle.ltd)> 【鈴木まこと】 tricle.ltd所属。雑誌編集プロダクション、広告制作会社勤務を経て、編集者/ライター/広告ディレクターとして活動。日本のドラマ・映画をこよなく愛し、年間ドラマ50本、映画30本以上を鑑賞。Twitter:@makoto12130201
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