冬ドラマ名作ベスト3。『不適切~』にも号泣したけど、最高に感動したNo.1は
番外編:おっさんのパンツがなんだっていいじゃないか!
『不適切~』と同じく昭和と令和の価値観に焦点を当てたのが、深夜帯の『おっさんのパンツがなんだっていいじゃないか!』=通称「おっパン」(東海テレビ・フジテレビ系)。練馬ジム氏の同名漫画を原作とした本作も、まったく違う切り口ながら面白い作品。筆者の中では今クールの深夜帯ドラマベスト1です。 こちらは“昭和の価値観”に凝り固まったアラフィフ男性・沖田誠(原田泰造)が主人公。家族や会社で居場所を失いつつあることを感じ、二回り以上年下のゲイの青年・大知(中島颯太 /FANTASTICS)と友人になったことをきっかけに、価値観をアップデートしていく物語です。
否定せずに認め合い、人が成長する姿が心を打つ
はじめは「男は会社で上を目指すべき!」「お茶は女の人が淹れたほうが美味しい」など、令和では明らかにハラスメントな発言をしていた誠。それらがコンプラ違反だと徐々に理解し始めてからも、築き上げた自分の尺度を変えることができず苦悩していました。 しかし友人の大知が「アップデート」という前向きな言葉を使い、誠の価値観に理解を示したことが、誠の変わる大きなきっかけに。回を重ねるごとに、葛藤しながらもトライ&エラーを繰り返し、大切な家族や周囲の人たち絆を深めていきました。 心から良作だと感じたのは、本作が誠を一方的に悪者としたり、誠ひとりに「アップデート」を強いたりなかったこと。誠の20代の娘に10代の息子、そして同い年の妻も、誠に影響されて前向きに変わっていきました。 『不適切~』と本作に共通するのが、“令和の価値観”も“昭和の価値観”どちらも認め合いながら、共存していこうと成長する人間たちを描いている点。世代や多様な価値観を超えて、人と人とが刺激し合い、高め合っていく姿。それは、今の時代を「生きづらい」と感じるすべての人たちの希望にもなったのではないでしょうか。
お別れホスピタル
NHKで放送された、岸井ゆきの主演の土曜ドラマ『お別れホスピタル』(NHK総合)も、相当な名作でした。原作は、沖田×華(おきたばっか)氏の同名漫画。 2018年には清原果耶を主演に、同じく沖田氏原作の漫画をドラマ化した『透明なゆりかご』(同)が大きな話題を集めましたが、脚本家・安達奈緒子を筆頭にしたスタッフが再集結したのが今回のドラマ。1秒たりとも無駄のない構成で、全4回とは思えないほどのインパクトを残しました。終末期の療養病棟を舞台に「死を迎える」ことと、「生きる」ことの意味を問いかけた物語です。