なかには危険な生き物も!夏の海水浴シーズンに磯遊びで出合う生き物10選
海辺の岩に囲まれた潮だまりや浅瀬で生き物を観察したり捕まえたりする、磯遊び。海水浴デビューにはまだ早いという小さな子どもでも楽しめる、夏休みの定番レジャーだ。そんな磯遊びでは、さまざまな生き物との触れ合いを楽しむことができる。今回は夏の磯遊びで出合える生き物について紹介。なかにはトゲがあったり毒があったりと危険な生き物もいるので、夏の磯遊びの参考にしてほしい。 【写真】東北地方の言葉で“赤ん坊”という意味の魚「オヤビッチャ」 ※ほかにも海には危険な生き物が生息しています。刺されたり噛まれたりした場合は、速やかに医療機関に相談することを推奨します。また、一部の生き物は漁業法や漁業権によって採取が禁じられている場合があります。必ず事前によく確認してください。 ■海の中の星「イトマキヒトデ」 日本で最も一般的に見られるヒトデで、全国の広い地域に生息する「イトマキヒトデ」。5角形の糸巻きのような形をしており、青色の体にオレンジ色の模様が特徴だ。その模様は個体によって若干異なる。大きさは5センチ程度で、浅瀬の岩礁で見られる。 多くの場合は5本腕だが、まれに4本や6本腕の個体もいるようで、発見できたらレア物だ。また、7本腕の個体を見たという目撃情報もあるそう。 ■食用としてもおなじみ「マナマコ」 ヒトデやウニと同じく、棘皮動物に属する「マナマコ」。全国の海に広く生息しており、食用としても用いられている。体の色は赤、黒、白、青緑など。また、海の掃除屋としても知られ、海底の泥を食べてキレイにして排出してくれる、海に棲む生物たちにとっては、ありがたい生き物だ。 グニャグニャとした体が特徴のマナマコだが、実は骨があることをご存知だろうか?骨といっても顕微鏡で見ないとわからないほど小さな骨で、骨片と呼ばれるもの。多数の骨片が厚い皮に埋もれている。 ■貝を背負ってチョコチョコ歩く「ホンヤドカリ」 本州に多く生息している「ホンヤドカリ」。カニやエビと同じ甲殻類で、巻貝を背負って歩く姿が特徴的だ。巻貝に隠れている腹部はかなり柔らかく、この腹部を外敵や衝撃から守るために巻貝を背負っている。CMなどの影響から、陸を歩いている姿を想像する人も多いかもしれないが、実は陸に棲むヤドカリはごく一部の種類だけ。基本的には岩場や浅瀬の水の中で生活している。 ホンヤドカリは一生のうちに何度も引っ越しを繰り返す生き物。体が大きくなったり、貝殻が傷んで気に入らなくなったりすると、新しい貝殻に引っ越しをする。引っ越しの際は、貝殻の大きさをハサミで測ったり、中のゴミを掃除したりするなど、なんだか人間味のある行動をする。ホンヤドカリの引っ越しが見たいなら、空の巻貝と一緒にバケツや水槽の中に入れておくと、見られることがあるそうだ。 ■水槽の掃除屋「イシダタミ」 北海道~沖縄の広い地域に生息する「イシダタミ」。イシダタミガイと呼ばれることもある。名前の由来は、貝殻表面の模様が石畳のように見えることから。藻を食べてくれるので、水槽の中で小魚などと一緒に飼う人もいるようだ。 体の大きさは2センチ程度。磯のくぼみなどに寄り添うようにしている。味噌汁などに入れて食べる地域もあるようだが、小さくて食べにくいため、あまり一般的ではない。殻が厚く、なかには尖っている個体もいるため、踏まないように注意したい。 ■エレガントに泳ぐ黄色い体「ナベカ」 体長10センチ程度で、体の半分以上が鮮やかな黄色をしているのが「ナベカ」。英名は「エレガントブレニー」で、その名のとおり美しく優雅に泳ぐ。北海道・函館より南の海に生息している。 岩などの隙間のほか、フジツボやオオヘビ貝の貝殻などを巣穴にすることもあり、小さな穴にも後ろ向きに泳いで収まることができる。これら管状のものから頭だけを出して警戒していることが多いので、よく探してみよう。 ■見つけたらレア!「オヤビッチャ」 「ビッチャ」は東北地方の言葉で赤ん坊という意味があり、「オヤビッチャ」は、“親になっても赤ん坊のように小さい体”が名前の由来だとも言われている。北海道~九州の、特に太平洋側に多く生息していて、サンゴ礁域の浅海や、潮だまりに棲んでいる。成魚は群れで海中にいるため、磯遊びで見つけられたらラッキーだ。 ちなみにオヤビッチャは死滅回遊魚の1種。死滅回遊魚とは、海流に乗って本来の生息地ではない海まで運ばれてしまう魚。そのため、多くの場合は冬を越すことができない。 ■高級食材としてもおなじみ「ムラサキウニ」 おいしいウニとしても有名な「ムラサキウニ」。本州中部~九州にかけて生息していて、国内で最も一般的に見られるウニの1種だ。九州の一部地域では「クロウニ」と呼ばれることもある。 大きさは直径5センチ程度。特徴的な長いトゲは1本ずつ動かすことができる。毒などは特にないが、トゲは折れやすいため、うっかり踏んでしまわないように注意が必要だ。 ■ゆらゆらと漂う傘のような体「ミズクラゲ」 日本沿岸でよく見られるクラゲで、世界中の広い範囲に生息している「ミズクラゲ」。透明な傘を広げたような形が特徴で、最近では水族館でイルミネーションと併せて展示されていることも多い。漢字では「水海月」と書き、水面を漂う姿はまるで満月のようだ。 傘の縁に細い触手がたくさんあり、これでプランクトンなどのエサを捕まえる。毒性は弱いものの、海で見かけても触らないようにしよう。 ■毒性が強く危険!「アカクラゲ」 関東以南では4~5月、東北地方では7~9月に見られることが多い「アカクラゲ」。長く伸びた触手にある刺胞の毒性が強く、刺されると非常に痛い。アカクラゲが乾燥して粉になったものを吸い込むとクシャミが止まらなくなることから、「ハクションクラゲ」とも呼ばれる。 浅瀬にも漂っているので、サーフィンや海水浴などで刺される人が多い。死んでも毒性がなくならないため、海岸や岩場などに打ち上げられているアカクラゲを発見しても、絶対に触ってはいけない。 ■背ビレに毒あり「ハオコゼ」 北海道と沖縄を除く日本各地の沿岸に生息している「ハオコゼ」。岩礁や海藻、アマモ場、潮だまりなどに棲んでおり、釣りで出合う機会も多い。 背ビレに毒性のあるトゲを持っているので、細心の注意が必要。ハオコゼのトゲは細く鋭いので、刺さりやすいそうだ。刺さった場合、激しい痛みを感じる。また、ハオコゼが死んでも毒は残るので、見つけても触らないように。 ■磯遊びの際に注意したいこと 最後に、磯遊びをする際の注意事項を、今回の取材に協力してくれた「名古屋港水族館」(愛知県名古屋市)のスタッフに聞いた。 ここまで書いたように、磯遊びで出合う生き物のなかには、トゲがあったり毒を持っていたりするものもいる。そのため、まずは絶対に裸足で遊ばないこと。ビーチサンダルもNGだ。足元は長靴やダイビングシューズなどがおすすめ。服装はラッシュガードなどの長袖・長ズボンに、軍手を着用するとよい。また、熱中症対策も怠らないようにしよう。 そして、磯遊びの場所となる岩場や潮だまりは、生き物たちの家でもある。小さな生き物たちからすれば、人間はいわば怪獣のようなもの。優しく、敬意を持って接することが大切だ。例えば石を動かすときはそっと動かし、観察が終わったら元に戻してあげよう。 海の生き物についてしっかりと理解を深めて、安全に夏の磯遊びを楽しもう! 取材・文=民田瑞歩/撮影=古川寛二 ※記事内の価格は特に記載がない場合は税込み表示です。商品・サービスによって軽減税率の対象となり、表示価格と異なる場合があります。