学術が目指すべき社会と人類の行く末 宇宙に生命を探すのはゴールではない
学術が目指すべき社会と人類の行く末を「フロンティア」と位置づけ、サイエンスとアートの役割について議論しようと、日本学術会議は6月27日、東京都内で公開シンポジウム「フロンティアを目指す、サイエンスとアート」を開いた。 シンポジウムの冒頭、宇宙航空研究開発機構(JAXA)の川口淳一郎シニアフェローは、フロンティアについて「『宇宙』や『深海』という狭い範囲での目的地ではなく、社会・人類の行く末も含めたもの」とし、アートについては「人工的な技量、技巧」であると位置付けた。 シンポジウムは28日までの開催で、初日は、評論家の立花隆氏らが登壇した「アーカイブ論」、「ロボットは人間に代われるか?~介護と廃炉現場で見えたもの」、「地球外生命(1)人知は神の摂理(生命)を超えられるか」など、幅広いテーマのトークセッションが行われた。
欧米よりも遅れる日本のアーカイブ化
「アーカイブ論」では、東京大学大学院情報学環の吉見俊哉教授が、「日本のデジタルアーカイブの現状には、4つの大きな問題がある」として、欧米よりもアーカイブ化が遅れている「ガラパゴス問題」、各組織でアーカイブ化を個別に進める「バラバラ問題」、方々で進みつつあるアーカイブ化の現状を俯瞰してとらえられない「宝のもちぐされ問題」、アーカイブの研究者や人材が職に困る「食べていけない問題」の4点を指摘した。 国際高等研究所の長尾真所長は、「(国立国会図書館館長時代に)予算を獲得して250万冊の資料をデジタル化して使えるようにしたが、1000万冊はアーカイブ化しないとだめだと思っている。200万冊のアーカイブ化に150~200億円かかるので、1000億円を用意すればかなりのことができる」と実績を披露。 続けて、「デジタル化する際に、著作権の問題などいろいろな制約があってオープン化がし難い。日本はもっとオープン化の努力が必要」と発言したのに対し、評論家の立花隆氏は「僕は、著作権がないと現実的に食っていけない」と異論を唱えた。モデレーターを務めた読売新聞の天日隆彦論説委員は、「アーカイブのフロンティアには特にお金の問題がある。アーカイブの問題にもっと目を向けて、議論を深めることが必要」とまとめた。