広島・新井が来季V2へ独占告白。「引退した黒田さんの代役はオレがやる」
セ・リーグのMVPを獲得、契約更改で3年ぶりに年俸1億超えにV字回復した広島の新井貴浩(39)に今季のカープ躍進の理由と来季に向けての新たな決意を聞いた。インタビューの中で、2年前に共に広島へ復帰、今オフに電撃引退した“盟友”黒田博樹(42)の代役は、「私がやる」とチームリーダー宣言をした。 ーーMVPおめでとう。 「優勝したいと、ただ一心だった。必死になってその目標に向かい、やり遂げたことへのご褒美だと思うけれど、本当のMVPは僕じゃない」 ーーというと? 「菊池ですよ。菊池は守備でも貢献してピンチを何度も救ったし、彼のバットで大切な勝ち試合を何試合も作った。僕は本当のMVPは菊池だと思っている」 ーー神っている鈴木誠也も凄かった。 「誠也は2つの才能を持った凄い選手。身体能力プラス努力するという才能だ。朝早くから球場にきて色んな勉強をしているし、しんどいことを当たり前のようにやれる。そして、感情、悔しさをグラウンドで出すこともできる。くそっという気持ちを打席で結果に変えることができて、その瞬間、瞬間、自分を表現することもできる。カープを背負っていく選手の一人でしょう」 ーーMVPだけでなく2000安打、300本塁打の金字塔も作った。 「それが目標ではなく通過点」 ーー一度は阪神で戦力外を通告された男が古巣へ復帰2年でMVPを獲得して年俸も3年ぶりに1億突破した。すごいV字回復だけど。転機は? 「2年前に、本当に帰っていいのだろうか?ファンは許してくれるのだろうか?と悩んだ末の決断だったけれど、帰ることを決めたときから、姿で示すしかないと思っていた。どんなことがあっても全力プレーを見せるということを自分に言い聞かせた。だからキャンプ初日から特守も特打もやったし、この2年間、どこまで本気なのかを、ずっと見られているんだという気持ちを忘れずにプレーした」 ーーひとつだけ苦言を言わせてもらえれば日本シリーズでは“昔の新井”みたいに打てなかった(笑)。 「(苦笑)シリーズは初体験。短期決戦の難しさを思い知らされた。日ハムの投手陣は大谷に代表される先発だけでなく中継ぎ陣もみんな良くてベース上でボールが伸びてきた。つかまえるのに苦労した」 ーーあなたの広島復帰への背中を後押してくれた“盟友”黒田が引退した。 「自分にとってもチームにとっても黒田さんは大きな存在だった。広島への復帰に悩んでいたときも“周囲が何と思おうが気にせず、もう一度裸になって出発しろ”と背中を押してもらった。その黒田さんが辞めると聞かされたとき、すごく寂しい気持ちに襲われた。黒田さんは、この2年、練習姿勢も考え方も、マウンドでのピッチングも、何ひとつぶれない人だった。チーム全体にこうあるべきだと示す鏡のような人だった」 ーー2桁を勝ちチームの精神支柱だった、その黒田がいなくなって大丈夫なの? 「黒田さんの穴は全員で埋める。黒田さんは、チームのために何をすべきかを貫かれた。若い選手が、その姿を見て受けた影響が大きかった。もし黒田さんが残した、そのチームのためにという精神から逸脱するような若い選手が出てくれば、僕が言います。黒田さんの代わりに、それをやるのが僕の役目だと思う」 ーーチームリーダー宣言だ。連覇への自信は? 「苦しい戦いになることは覚悟している。今季は、スタートにマエケンもいずに他球団からすればノーマークだった。でも来年はヨーイドンから他球団は、うちに対して“やり返す”という気持ちでかかってくると思う。だから、なおさら今年のような挑戦者の気持ちを忘れずにぶつかっていかねばならない」 新井は、現在広島のジムで来季へのスタートを切っている。優勝ハワイ旅行や、優勝チームゆえの行事が多く、練習が停滞していて「時間がない。あせっている」と言っていた。その気持ちがあれば40歳となるシーズンの新井への不安はないだろう。最後に「黒田みたいに電撃引退するんじゃないだろうね」と聞いたが、「わかりません。僕も1年、1年が勝負です!」と、覚悟を決めた表情で答えてくれた。 (文責・駒沢悟/スポーツライター)