DJ KOO脳動脈瘤で「失明寸前」命の危機を家族と乗り越え復活。“初期症状ゼロ”脳動脈瘤の危険度とは
DJ KOO脳動脈瘤で「失明寸前」命の危機を家族と乗り越え復活。“初期症状ゼロ”脳動脈瘤の危険度とは
脳の血管に瘤ができる脳動脈瘤という病気をご存知でしょうか。別名サイレントキラーと呼ばれ、ほとんどの場合症状が全くないのが特徴です。今回はテレビ番組の企画で脳動脈瘤が発覚し、6時間半の手術を決意したDJ KOOさんと脳神経外科指導医の鶴田和太郎先生に病気の発覚から手術、術後のリハビリやご家族の支えについて聞かせていただきました。
チャプター1 脳動脈瘤の発覚と治療を振り返る
鶴田先生: 脳動脈瘤発覚当時のエピソードについてお聞かせください。 DJ KOOさん: 症状はありませんでした。強いて言えば頭痛が時々あったくらいですね。脳動脈瘤が発覚したきっかけは某テレビ番組でした。それまで僕は健康でDJをずっとやっていて「その日元気であればいいや」という感じでした。でも初めて脳ドックを受けたら、テレビ局からすぐに「大変です。脳動脈瘤が……」と連絡がありました。 鶴田先生: まさかですよね。脳動脈瘤は破裂したら、くも膜下出血になりますが、そうでなければほとんどの方は症状がなく脳ドックなどで発見されることが多いです。 DJ KOOさん: 瘤が左眼の神経に触れていて、このままだと失明の恐れがあり、9.8mmもある大きい瘤で、瘤の上にさらに小さな瘤が乗っかったようないびつな形をしており、危険な瘤であることがわかりました。これは、1週間先の自分がこの世から消えてもおかしくない状態なのかと、一生のうちであれほど自分を見失ったことはなかったです。 鶴田先生: 爆弾を抱えたような心境ですよね。 DJ KOOさん: はい。足が宙に浮いたような状態で「家族になんて言おう……」と考えていましたね。 家族にはまず電話で「実は脳動脈瘤があって、すぐに手術しなければ命の保証はないらしい」と伝えたのですが、その日の仕事を終えて帰宅したら、妻と娘がもう脳動脈瘤のことを本やサイトで調べていました。そうやって病気について知ることで余計このままだったら大変なことになると実感したのを覚えています。鶴田先生、どうして脳の動脈に瘤ができるのですか? 鶴田先生: はっきりと原因は分かっていないのですが、血管の壁が弱くなっているところに拍動の圧がかかり、徐々に膨らんでくると言われています。そこまで珍しいものではなく、だいたい25~50人に1人の割合で見つかります。 破裂する確率は平均すると年間で約1%。逆にいうと99%の人は大丈夫なので見つかったからといって大慌てするものではありませんが、破裂すると即、くも膜下出血を起こします。発症すると3分の1は死亡、3分の1は要介護、3分の1は元気に復帰できるという脳卒中の中でも予後が悪いのがくも膜下出血です。 DJ KOOさん: そういった事実を知れば知るほど不安が募りましたね。 鶴田先生: そうですよね。とくに、喫煙や飲酒の習慣がある人や、高血圧の人はくも膜下出血になりやすいと言われています。男女比ですと女性が多いです。 DJ KOOさん: 僕は一切たばこも吸わないし、お酒も飲まないです。 鶴田先生: そうなのですね。破裂以外にもうひとつ瘤が周りの神経を圧迫するというリスクがあります。例えば視神経を圧迫すると目が見えなくなり、元には戻りません。破れる前、目が見えなくなる前にKOOさんの動脈瘤が見つかり、きちんと治療していただいて本当によかったです。 DJ KOOさん: 脳動脈瘤はサイレントキラーと呼ばれていますが、こうなったら検査した方が良いというのは本当にないのですか? 鶴田先生: 脳動脈瘤は本当に怖いもので、破れるまでは症状を出さない、まさにサイレントキラーですね。見つけるためには脳ドックでチェックするしかありません。 とくに40歳以上や喫煙者、高血圧、飲酒量の多い方、女性、ご家族に脳動脈瘤の方がいらっしゃる方などは症状がなくても積極的に脳ドックを受けていただきたいですね。 DJ KOOさん: やはりそうなのですね。 鶴田先生: KOOさんが手術を受けると決めた時のことを教えてください。 DJ KOOさん: 先生から手術は2種類あると言われました。カテーテル手術と開頭クリッピング術です。 鶴田先生: 血管の中から糸のようなコイルやステントと呼ばれる円筒状の金属メッシュを入れて血管の中から固めるのがカテーテル手術と、KOOさんが受けた開頭クリッピング術ですね。 DJ KOOさん: 頭を切って手術するなんて怖かったですが、家族からは「出来るだけ根本から治療してもらって」と言われました。診てもらった先生に「私は病気を手術するのではない。『DJ KOOの人生』を手術します。手術後も今まで通り『DJ KOOの人生』が送れるようにします。」と言っていただき「この先生にお任せしよう」と思いました。 鶴田先生: 未破裂動脈瘤は症状が全くなく元気なので、手術に踏み切るのは怖いですよね。そこで手術を決心するには、医師との信頼関係が大事だと思います。 DJ KOOさん: はい。先生からは「まだ未破裂なので必ず復帰できますよ」と言っていただきました。ただ、手術が6時間半と……かなりかかりましたね。 鶴田先生: 開頭クリッピング術の良い点は再発が非常に少ないことです。ただ、頭を切らないといけない。KOOさんの場合、眼の神経が接していたり、大きいので血流を一旦止めてクリップをかける必要があり、かなり大掛かりな手術になったと思います。 DJ KOOさん: 当時、娘がまだ高校生でいつも毅然としているクールな子ですが、手術室から出てきた僕に「パパー!」と泣いてすがっていたと聞いて相当心配させてしまったなと思いました。