輪島塗 再建誓う9代目「全部なくなったけど、人は残った」 絶望の中の奇跡…火を免れた“見本椀”
■輪島塗の強さに助けられた
火災ですべてを失い絶望していたが、後日、店内からは奇跡的に残ったお椀や陶器、塗り物が見つかった。防火扉を閉めていた店舗の2~4階には火が回らなかったためだ。 すすだらけで散乱していたが、床に落ちても割れなかった椀も多かったという。「“堅牢優美”と称される輪島塗の強さに助けられた」と小西さんは嬉しそうに眺めていた。
■火から守られた“見本椀”「歴史を途絶えさせなくて済む」
いくつかのお椀や漆器は、ほとんど無傷の状態で残っていた。特に江戸期から代々受け継がれてきた“見本椀”が無事だったことは「奇跡」だという。伝統ある輪島塗はこれを手本にして、オーダーメイドで作っていくことが多い。「これで店の歴史を途絶えさせなくて済む」。小西さんは安堵したという。 この震災を通じて一番大切なものを再確認できたという。それは長年一緒に輪島塗を作ってきた仲間たちの存在。「建物も作業場も全部なくなったけど、人は残ったんです。職人さんたちも全員無事だった。人脈だけあれば何とかなる。人に助けてもらいながら、何とかやっていこうと思います」と、小西さんは前を向く。 実際、輪島塗には工程が120以上あり、1つの品物を作るだけでも5~6人の職人が必要になる。彼らがいれば、また再建できるはずだという。燃えずに残った輪島塗の椀を使いたいと声をかけてくれる料亭もある。小西さんの店は、少しずつ出来る仕事から再開し始めた。