「孫正義にハシゴを外されて大損失」それでも尊敬できてしまうワケ
井上 孫社長との最初の出会いは? 熊谷 最初の思い出は、インターキュー(現GMOインターネットグループ)が上場した日のことです。その日、僕は「孫さんのおかげで上場することができました。ありがとうございます」とお礼のメールを送ったんです。すると、即座にご本人から「おめでとう」と返信が来たので驚いたことをよく覚えています。 その後、99年に孫さんがナスダックジャパンを創設したときに、僕も発起人の1人に加えていただいたのですが、その際、孫さんのご自宅で開かれたパーティにお招きいただきました。孫さんの書斎をご案内頂き、またご自宅に孫さんが発明したゴルフシミュレーターがあるのは有名な話ですが、打席に立ったゲストの上場企業社長に、いたずらで雨を降らして楽しまれていましたね(笑) その後、ある授賞式でご一緒しましたが、それがお目にかかった最後かもしれません。 ● 熊谷正寿が考える 本当にすごい経営者 井上 起業家として「孫さんのここがすごい」という点はどこですか。 熊谷 壮大なスケールで未来像をイメージし、そのゴールを確信し、達成までのプロセスを年、月、週、日にまで落とし込んで、コツコツと日々の成長を積み上げていくところですね。こうしたビジネスのアプローチは僕も同じですが、孫さんは僕の何十倍もスケールがでかい。僕なんか足元にも及びません。僕は孫さんのミニチュア版だと思っています。 僕は、テクノロジー分野の起業家ってSF少年なんだと思います。イーロン・マスクもSF好きを公言し、幼少時代から現在に至るまで一貫してSF作品に影響を受けている。孫さんや僕も同様で、おそらく「見えている景色」はみんな同じだと思う。ロボットが街中を闊歩していて、AIと人間が対話をしている、そんな光景です。幼少期に同じような体験をしているから、同じ未来をイメージしているんだと思います。 井上 熊谷さんが「この人はすごい経営者だ」と思う人物は? 熊谷 多くの経営者から学ばせていただいていますが、ビル・ゲイツ、イーロン・マスク、最近ではNVIDIAのCEOジェイスン・ファンなどが尊敬する経営者です。 井上 先ほど、「イケてる経営者」の研究が趣味だというお話がありましたが、最近はどんな経営者に注目していますか? 熊谷 LVMH(モエ・ヘネシー・ルイ・ヴィトン)グループの総帥で、世界長者番付トップのベルナール・アルノーを研究中です。 彼は現在75歳。僕より15歳年上ですが、たった38年で現在のLVMHグループを築いた人物です。僕がインターネット事業を開始したのが27年前ですから、11年しか変わらないのに、世界の時価総額ランキング17 位というとんでもない大企業に成長させたのです。