男子フィギュア4年ぶり復帰、高橋大輔の近畿3位をどう評価すべきか?
バンクーバー五輪銅メダリストの高橋大輔(32、関大KFSC)が7、8日の両日に尼崎市の尼崎スポーツの森で開催された近畿選手権で4年ぶりに現役復帰を果たした。ショートはトップに立ったが、フリーではジャンプでのミスを連発して計195.82点で3位。それでも持ち味である世界トップ級の表現力は健在。目標とする12月の全日本選手権への出場権を争う11月の西日本選手権への出場権を獲得した。高橋の復帰戦は、どう評価すべき内容だったのか? そして全日本出場への可能性は?
フリー演技を終えた瞬間、高橋は苦笑いを浮かべた。 冒頭の3回転フリップ+3回転トゥループの連続ジャンプには成功したが、直後のトリプルアクセルで転倒。GOE(出来栄え点)はマイナス4.0点となった。 プログラムの後半に入れた4つのジャンプでは、最初にトリプルアクセルで転倒、3回転ルッツ、3回転ループが、いずれもダウングレードとなり基礎点を維持することができずに技術点が39.52点と伸びなかった。大きなミスのなかったショートで、77.28点を獲得して首位に立っていた貯金を吐き出してしまい、昨季の世界選手権5位の友野一希(20、同大)が優勝、高橋は3位に終わった。 「最低ですね。現役復帰してからこんなにボロボロな演技は練習も含めて初めて。悔しさより、これが今の実力なんだと実感した」 演技後の高橋は結果を受け止め明るく笑っていた。 「1年限定復帰」の目標としている全日本選手権のフリーの最終滑走にたどりつくまでの第二関門とも言える西日本選手権への出場権は得た。 フリーでは、もう体力が切れてバテバテとなっていたが、何が足りないかの課題を認識したのだろう。 では今回の復帰演技をどう評価すべきなのか? 元全日本2位で福岡で後進を指導している中庭健介氏は「新しい高橋選手の世界観を見せてもらった気がする。演技力は4年前より増している。作品を表現したいというメッセージが伝わってきた」と高く評価した。 「どのレベルで評価するか、でしょう。いきなり羽生選手や宇野選手ら世界のトップレベルと比べるとすれば、当然、厳しい評価になるのかもしれませんが、高橋選手が復帰した目的と意義を考えると、評価すべき点は多いと感じました。 高橋選手は、引退後もアイスショーには出ていました。それらショーの演技は、3分程度が多く、2分50秒のショートと似た時間にまとめられているものなので不安はないと思っていました。ジャンプも軽くて柔らかい。大きなミスもありませんでした。問題は、そこから回復時間もなく迎えるフリーなんです。しかも、今季から演技時間が4分となり、ジャンプが、1本減っても、そこに多くの要素をつめこまねばならなくなって、スケーターにとって過酷な状況となっています。その状況を考えても高橋選手の演技にミスが出たのは仕方がなかったでしょう。ただ驚かされたのは、4回転は、ありませんでしたが、非常に難しいフリーのプログラムにチャレンジしたことでした。複雑に作りこまれ、“こんな風に3回転を跳ぶのか”と感じるほど、ジャンプがプログラムの一部と化していました」 黒でまとめたシックな大人の衣装で、ジョン・グラント作詞、作曲の「Pale Green Ghosts 」がフリーの曲。高橋が希望していたブノワ・リショー氏の振り付けだ。中庭氏が指摘するように演技の後半に4つのジャンプを複雑に工夫された入り方から跳ぶプログラムで、ただでさえブランクがある高橋が、後半にスタミナが切れたのも無理はなかった。だが、高橋が復帰した今季の目標にたどりつくためには必要なプログラムだと決断したのだろう。