「ダッチワイフ」から「ラブドール」へ…リアルの追求から新たな境地を拓いた〝オリエント工業の功績〟
『ラブドール』を創ったオリエント工業
ラブドールの老舗メーカーとして多くのファンに支持されていたオリエント工業が9月20日に惜しまれつつ、その営業を終了した。現在、同社のサイトのトップページには代表・土屋日出夫氏の挨拶の言葉が残されている。 【「揉んで」「飲む」って?】すごい…これがおっぱい型ドリンクサーバー「モンデノーム」だ! 《長年にわたり 御社を支えて下さった皆様には心より感謝と御礼を申し上げます。誠に残念ではありますが9月20日をもって上野ギャラリー&ショールームは閉店いたしました。大変長い間、誠にありがとうございました。》 営業終了の決断に至った理由としては、創業者であり、代表でもある土屋氏が体調を優先して引退を決断したからだとしている。なお、工場でのメンテナンスやサポート業務は引き続き行っていくという。 オリエント工業は1977年に土屋氏が創業した。従来の『ダッチワイフ』は空気を入れて膨らませるビニール式のものが主流で、作りも見た目もかなり粗雑だったことから根本的に改良したいと始めたのだという。それは障害者が風俗でも相手にされず、性処理に悩んでいる話を聞いて、優れたダッチワイフを開発する必要性を感じたことがきっかけだった。それゆえに同社の製品は開業当初は障害者にしか販売をしていなかったそうだ。 同社が目指したのは《『心の安らぎ』を得られる女性像の開発》だった。性処理だけが目的ではなく、同社が開発した『ラブドール』は人の生活に深く関わって多くの人に愛されるようになった。『ラブドール』という名称は同社のファンが従来の『ダッチワイフ』と区別するために使い始めた呼び名だという。’01年から素材にシリコンを使用したり、骨格を採用したりすることなどで『ラブドール』は年々進化を遂げた。リアルを追求しながらも人間とはまた違ったその〝美〟には多くの人が魅了され、写真集やゲームまで作られるようになる。現在の『ラブドール』ファンは男性に限らず女性も少なくない。 現在ではシリコンよりも新しい素材であるTPE(熱可塑性エラストマー)製のものが、より安価に入手できることから主流となっている。中国製のものも多いようだ。しかし、『ラブドール』をここまでメジャーな存在にしたのは「元祖」であるオリエント工業の功績であることは間違いない。 本誌は過去に2回、同社を取材している。当時の記事と写真をもとに、往時のオリエント工業をふり返りたい。(《》内の文章は当時の記事を引用) ◆【潜入撮 2週間かけて細部までこだわる製作現場 ラブドールが「何もかもアナタ好み」で誕生するまで】(’14年10月3日号) 本誌は’14年にオリエント工業のラブドールの製作現場を取材していた。当時の製造責任者のA氏は同社のラブドールについて次のように話していた。 《「年間で500体ほど販売しています。ほとんど手作業なので1体作るのに2週間はかかる。価格は55万~80万円ほど。お客様は40~60代が中心です。性交渉の相手としてではなく、添い寝などして安らぎを得ている方もいます。なかには家族に知られたくないため、わざわざラブドール用にマンションを借りている方もいるんです。顔の種類は24タイプ。体のサイズやヘアの濃さなども、お好みで選べます。完全受注生産です」》 実際にラブドールを製作している工場を見せてもらうと、以下のような様子だった。 《製作現場を訪れると、部位ごとに工程が分かれていた。まずは頭部。8畳ほどの部屋で4人の女性が作業している。素面の唇に色を塗り、まつ毛をつけ、丁寧にメイクしている。 「彼女たちは映画の元美術担当やスタイリストです。ファッション誌などをチェックして、流行の化粧を取り入れています。顔の作りは、癒やし系からキツメまでさまざま。グラビアモデルを参考に、毎年改良しているんです」(A氏) 20畳の大部屋には、50体ほどの裸のボディが。よく見ると、胸の大きさが違う。A氏が続ける。 「たとえば身長157cmの手足の長いタイプのボディには、BとEの2種類のバストサイズがあります。使っているシリコンゲルという素材の柔らかさは、人肌に近い。ベビーパウダーでベタつきを抑え、乳首にカラーリング。その後30℃に保たれた乾燥室で3時間乾かします」 ヘアは二股に分かれた特殊な針で、一本一本植えつける。グラビア誌のヌード写真を見ながら、男性が好む形状にするこだわりようだ。 「股間には、挿入用のカートリッジ式ホールを入れます。種類は5つ。入り口の広さや締めつけ度合いが違うんです。エラストマーというシリコンより柔らかい素材で、油分が多く含まれているため湿り気も問題ありません」 (A氏)》 頭のてっぺんからつま先まで、手間ひまをかけた繊細な作業によって、ラブドールは生命を吹き込まれていた。 ◆【コロナ禍の救世主!? 『モンデノーム』で孤独な宅飲みも楽しくなる】(’21年6月4日号) コロナ禍の真っ只中に本誌がオリエント工業を取材したのは、同社が開発したおっぱい型の卓上ドリンクサーバー『モンデノーム』の取材のためだった。開発の理由について、当時、土屋日出夫社長は次のように話していた。 《「コロナで暗い世相ですし、せめて明るい話題を提供しようと思い、昨年11月に発売に踏み切りました。右胸を揉むと、内蔵されている電動ポンプが稼働して、左胸の乳首からお酒が出てくるというものです。定価は30万8000円ですが、コロナ終息祈願価格として、19万8000円で提供させていただいています」》 なかなかのお値段だが、3ヵ月で6回、2泊3日のレンタルサービスも10万円で行っていたようだ。コロナで飲みに出かけられず、多くの人が自宅で鬱々と過ごしていた当時、この『モンデノーム』は心の癒やしになったに違いない。
FRIDAYデジタル