トランプ次期大統領が恐れる「人民元が基軸通貨」になる日〈エコノミスト河野龍太郎が徹底解説〉
間もなく2期目のドナルド・トランプ政権が誕生する。トランプ2.0の行方に注目が集まる中、BNPパリバ証券経済調査本部長チーフエコノミストの河野龍太郎氏が「中長期的に見て、20年、30年後には人民元がドルに並び立つ日が来るかもしれないと考えています」と「 文藝春秋 」(2025年2月号)のインタビューで語った。 【画像】金融強国を目指す習近平氏
景気刺激のために3会合続けての利下げ
現在のアメリカ経済は好調だ。3%程度の成長が続き、完全雇用に近い状況になっている。河野氏もトランプ2.0についてこう述べる。 「インフレは続くが、アメリカの景気は悪くならないどころか今後もしばらくは好調が続く。それが私の予測です」 12月18日、FRBは0.25%の利下げを行ない、政策金利の誘導目標を4.25~4.5%とすることを決定した。インフレが再燃するリスクがあるものの、物価は低下する基調にあると判断し、3会合続けての利下げに踏み切った格好だ。 「今後はそれが難しくなり、利上げの可能性さえあります」(河野氏)
ドル離れについてのトランプ氏のSNS投稿
第二次トランプ政権が誕生しても、好景気が続くとみられるアメリカ。ドルの基軸通貨としての地位は揺るぎないもののように見える。だが実は2024年後半、アメリカの「恐れ」を感じさせる出来事があったと河野氏は指摘する。 2024年11月30日、トランプ氏はSNSにこう投稿した。 「BRICS諸国がドルから離れようとしているのを、黙って見ている時代は終わった。(中略)強力な米ドルを代替する通貨を支持することもないという確約を求める。さもなければ、100%の関税を課し、すばらしいアメリカでの販売に、さよならを告げることになるだろう」
米財務長官も今後のドルについて強硬な発言
河野氏が解説する。 「これはドルを基軸通貨とする現在のシステムへの挑戦に対する牽制です。確かに中国やロシア、インドなど新興5カ国で構成されているBRICSは、ドルを貿易取引などで使用しない『脱ドル』を進めてきました。さらに2024年1月には、イラン、エチオピア、エジプト、アラブ首長国連邦の4カ国が新たに加わりました。ロシアのウラジーミル・プーチン大統領は、『BRICS加盟国の貿易取引などの65%は各国の通貨で行われている』と、ドル以外の取引が広がっていることをアピールし、ドルシステムに揺さぶりをかけています」 トランプ氏だけではない。ジャネット・イエレン米財務長官も12月、今後のドルについて強硬な発言をした。2人はなぜ、これほどまでの恐れを抱いているのか。 『文藝春秋』(2025年2月号)及び「 文藝春秋 電子版 」掲載の「 ドル覇権が終わる日 」では、ドルと共に人民元が基軸通貨となる日が来るかもしれないと考える3つの理由、人民元が基軸通貨となるにあたって越えなければならないハードル、そして米中の角逐の中で日本は何をしておくべきなのか、について河野氏がくわしく語っている。
「文藝春秋」編集部/文藝春秋 2025年2月号