果樹折れて牛舎半焼も 台風10号 九州で農業被害相次ぐ
非常に強い勢力で鹿児島県に上陸した台風10号は30日、観測史上例のないゆっくりとした速度で九州を横断した。長時間にわたって大雨や暴風が続き、農業にも甚大な被害をもたらしている。鹿児島県では畜舎やハウスの損壊・浸水、落果が確認された他、佐賀県では牛舎火災で飼育牛が焼け死んだ。停電も鹿児島県を中心に九州全域で一時10万戸を超え、酪農などへの影響が懸念されている。 総務省消防庁や各県によると、死者は27日夜に起きた土砂崩れで家族3人が死亡した愛知県や徳島、福岡で5人、行方不明者は鹿児島で1人、負傷者は重傷10人を含む101人に上っており、今後さらに増える恐れがある。 家畜被害も深刻だ。29日午後3時ごろ、佐賀市川副町にある牛舎が「燃えている」と通行人から119番があり、消防が消火に当たったが、木造平屋建て牛舎が半焼。飼育していた和牛41頭のうち38頭が焼死した。経営者はJAさがの組合員で、出火当時は自宅にいてけがはなかった。 JAによると、組合員はブランド「佐賀牛」などになる子牛14頭と繁殖雌牛27頭を飼育していた。生き残ったのは繁殖雌牛1頭と子牛2頭だけだった。 当時は県内で風速20メートル以上の暴風が吹いており、畜舎は閉じられていた。警察は、風で切断された電線から出火し、牛舎に燃え移った可能性もあるとみて原因を調べている。 河川氾濫による浸水も広範囲に及んだ。 国土交通省などによると、30日午前6時までに大分、岩手、埼玉、静岡、愛知、三重、宮崎の18河川で氾濫。住家被害は静岡117棟、宮崎86棟、大分75棟、岩手23棟で半壊、床上・床下浸水などが発生。停電も各地で続いており、九州電力送配電によると、30日正午ごろ、鹿児島県で9万5000戸が停電、九州全域で一時10万戸を超えた。 毎年のように台風が接近する九州だが、経験にない長時間の大雨と暴風に混乱している。福岡県築上町の職員は取材に「30日朝に風は弱まったが、まだシャワーのような勢いの雨が続いている」と話した。 (小林千哲、佐野太一)