行き先は(10月29日)
地下鉄「東京メトロ」の証券取引所上場が話題をさらう。初日の取引で、時価総額は何と1兆円を超えた。売却資金の一部は震災の復興財源というから、被災地の関心を呼ぶ▼気は早いが、今年の十大ニュースは「株」がキーワードになりそうだ。1月に始まった新NISAが起爆剤となり、有価証券を持つ人の割合は初めて2割を上回ったとされる。水を差すように、東京市場で8月、株価が記録的な乱高下を見せた。「預貯金にもっと金利が付くなら、浮き沈みのある金融商品に手は出さぬのだが」との嘆きも聞こえた▼「選挙は買い」の格言が崩れた。前回まで17回の衆院選期間中、株価は毎回上昇した。今回は一転。自民党の苦戦が伝わり、政局の行方が見通せないためとされた。巻き返しは起きず、与党は過半数割れに。年末にかけてひと波乱が市場にも、とは想像したくはないが▼メトロ株の出だしと異なり、新生「石破号」は始発駅を出て、すぐつまずいた。復活「野田号」が他党に共闘の路線を延ばせるかは不透明。永田町の動揺は兜町へ即時に伝わる。どうか安定した国会運営を。「貯蓄から投資」の発車合図に誘導された国民が、行き先を見失っては困る。<2024・10・29>